感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
105
フランスの詩人ジャムの散文と韻文。ジャムは優しさの詩人だと思う。うわべだけの優しさではなくて、この世の悲惨さを見極めたうえでの優しさ。それは一人の不幸な街娼のこと描いた小品「大女優」を読むと分かる。動物が好きだった人でもあり、表題作の「野うさぎ物語」の中には多くの動物が出てきて、彼らの昇天が詩的に描かれている。これは、物言わぬ生き物たちの痛みを感じられるジャムの感受性が書かせた物語と言えるかもしれない。物語のラストはほろ苦いけれど、詩人としてこの世で生きていく覚悟が表現されている気がした。2015/01/02
袖崎いたる
3
別乾坤の建立を詩人は志す。「もし人が詩的遊戯ならぬ、日々の些事の上に印された神の足跡を追ってゆけば、どんな枝葉末節も、一つの宇宙にならずにはゐまい。それでも人は、例へばあの時ではなくこの時に、あの日ではなくこの日に、一人の子供が或る森の中で苺を摘んだ、などといふことは大したことではない、と考へるのであらうか?」p110 宇宙の気配を、創造主としての気概を、感じせしめる詩性。これらを、訳者・安東次男は老いた母と幼い娘に読み聞かせてやりたかったそうな。ほほえみ。2022/06/25
poefan
1
野うさぎの希有な昇天の模様を描いた散文詩など。安東次男さんが翻訳している。2010/01/18