内容説明
ダルタニャンを逆恨みし、命をつけ狙う、妖女ミラディー。友人の危機に立ち上がる三銃士だが、敵は枢機卿と結託し、さらなる陰謀を企んでいた。フランスとイギリスをまたにかけた攻防戦の中、明らかになるミラディーの本性、ダルタニャンの切ない恋の行方は?4人の快男児が織りなす友情のクライマックス。
著者等紹介
デュマ,アレクサンドル[デュマ,アレクサンドル][Dumas,Alexandre]
(1802‐1870)。北フランス生まれ。ナポレオンに仕えた将軍である父と幼くして死別し、恵まれない幼少期をおくる。作家を志し、20歳でパリに上京。戯曲『アンリ3世とその宮廷』が成功をおさめ、19世紀フランスを代表する人気作家となる
竹村猛[タケムラタケシ]
1914(大正3)年生まれ。東京大学仏文科卒。台北帝国大学講師、台北経済専門学校教授、東北大学助教授、埼玉大学教授、中央大学教授を歴任。バルザック研究に生涯をささげる。87年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
311
『三銃士』全3巻の完結編…のはずなのだが、なんとしたことか、この巻にはダルタニャンも三銃士達も出番がまことに少ない。彼らに代わって、全篇を縦横に暴れまわるのは、妖婦ミラディー。絶世の妖艶なまでの美貌で、奸智に長け、男を手玉に取る希代の女スパイだ。おそらくデュマ自身も書いているうちにどんどん興が乗ってきて、その結果がこんなことになったのだろう。思うに、デュマの小説作法は、構想を立てずに、行き当たりばったりに書いていく天才肌のそれだったのだろう。日本でいえば、まさに西鶴のタイプ。エンディングは悪くなかった。2015/11/07
mocha
112
下巻は悪女ミラディーの独壇場。映画『王妃の首飾り』でのミラ・ジョヴォヴィッチもよかったけど、フェイ・ダナウェイ版も観てみたくなった。あと『仮面の男』もまた観たい!有名なフレーズ「ひとりは皆のために〜」が、この本では「四人はひとつ 切っても切れぬ」と訳されていたのがちょっと違和感。それも上巻で1度出てくるだけだった。1962年の訳だから、このフレーズがこんなに独り歩きする時代が来るとは想像もしなかったんだろうな。ともあれ、とても楽しかった。2016/05/16
ヴェルナーの日記
83
下巻は、なんといっても悪女美人ミレディーでしょう。彼女とダルタニアンとの駆け引きもさることながら、謎めいたミレディーの内面に迫る内容は、本書の最大の見せ場といえる。欲を申せばアトスとの絡みがもっと描いてもらいたかったところでしょうか。ただボナシュー夫人は、上巻での取り上げ方からいって、もっとダルタニアンと絡んで欲しかったのですが―― あとバッキンガム公も、わりと呆気なかったで気がします…… ご愁傷さまです。2015/12/24
のっち♬
75
下巻では義兄のウィンター卿に監禁されたミラディーが若い敬虔な士官フェルトンを、恋と義憤と官能に酔わせて味方につける展開が主軸に。狡猾で躊躇せずに悪事を働く彼女の存在感は、主役を食ってしまうほど圧倒的で、終盤は主人公への復讐に燃えて次々と劇的な展開を生んでいく。「I am lost! I must die!」という散り際のセリフも印象的。主人公のロマンスとしては悲劇的な幕切れだが、決して陰鬱にならず、快活で清涼な雰囲気を崩さないところが著者らしい。翻訳も情緒豊かかつ平易な文体で岩波に比べて読みやすく感じた。2020/05/30
k5
74
ついに読了。悪女ミラディーがフェルトンを籠絡するくだりが素晴らしすぎる。小説というメディアの華って、会話や交渉の心理戦にあると思っているのですが、この心理戦はエンタメとして最高峰でしょう。あと、中巻の感想でバッキンガム公爵の狂気について書きましたが、世間的にもそれなりにヤバい人だな、と思われていた、とwikiで知りました。ダルタニャンの若僧感と、アトスのハードボイルド感が対照的なのも魅力です。2021/09/15