内容説明
「ほんの少しの起きている時間で、パン一枚だけ食べて、書かなくちゃならない原稿だけ死ぬ思いで書いて、猫の世話だけは何とかやって、あとはとにかく臥せっているしかありませんでした」望んだ再婚生活なのに、心と身体がついてゆかない。数回の入院生活と自宅療養、うつ病をわずらった作家が全快するまでの全記録。克明な日記の、2年2ヶ月の空白期。書けない時期に何があったのか―。文庫化にあたり60枚を加え、重症期の闘病を明かす。
目次
まずはここからお読みください
人恋しいのか違うのか
生きるってなあに
ぐるぐるまわる
頑張れは禁句でも頑張れ
今夜、病院に戻りたい
仕事をするのはもう無理
ひとつひとつできるようにする
てゆうか、私、失恋ですか
まじでありえません
表現すること問いかけること
あの頃どうにかしてました
今更ですが、ありがとう
改めてふり返ってみました―2004年3月~2006年5月の出来事
不安定になっている方とそのご家族の方へ
著者等紹介
山本文緒[ヤマモトフミオ]
1962年神奈川県生まれ。OL生活を経て、人間関係の繊細なずれから生じる喪失、慈しみをテーマに作家活動を続け、現在に至る。『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞を、『プラナリア』で第124回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
109
「恋愛中毒」の山本文緒がうつ病になってた。それも自殺念慮を伴う本気の症状で入退院を繰り返し、回復するまで10数年の闘病記。今現在うつの人とそれを支援する人、うつ予備軍は読んで欲しい。当事者の手で書かれたいいものは余り無いから。通して読むと分かるが、うつ病は薬だけでは治らない。考え方の癖を変えて、うまく人に頼って、酒タバコを減らして運動しないと良くならない。逆に薬が少々合わなくても、信頼できる人に会えれば回復する。静和病院での治療があったからこそ、次の病院で本腰入れて取り組めたのだろう。読めてよかった。2019/11/23
mike
82
元々は山本さんが再婚生活について綴った日記エッセイで雑誌に掲載されたもの。ところが鬱病が再発し、次第にその内容は鬱病闘病記の様相を呈するようになったらしい。それにしてもこんなに苦しい中でよく仕事が出来たなと思う。その文章にはユーモアさえ感じさせる。そして、実は彼女の再婚生活がいかに素晴らしいものかを如実に物語っている。王子と呼ぶ夫。彼が妻に寄り添い見守り苦しみから解放させようとする、その細やかな愛情には涙が出る。私は鬱に苦しむ者を知っているので身につまされたが、最後まで読んで良かったと思える1冊だった。2025/06/27
kei302
71
小説も好きだけど、このエッセイを読んでから、ますます好きになったのです。ご冥福をお祈りします。2021/10/18
Comit
62
Kindle Unlimited~著者自身の鬱病闘病日記と、病気を乗り越え当時を見つめ直した赤裸々な一冊。もがきながら、水面から出た部分で何とか呼吸しながら生きる。例えるならゴールの見えない遠泳、なんて長いんだろう…必死に抵抗してたんだなぁ、漠然とした不安に。我慢して我慢して、気付いた時には、重症化してた…そんな彼女を支えた両親、スタッフ、そして夫…彼女の病気から目を背けず、立ち向かった。日記にも残せなかった記憶には、本当に心揺さぶられた。山本文緒さんの知らなかった一面を知ることができた一冊。2021/05/24
よしのひ
60
前半、読み進めるのが本当に辛かった1冊。私の周りでも山本文緒さんと同じように悩んでいたので、それと重なる。しかし、後半は文体や表現からも分かるように、どこか前を向いている文が増えてくる。王子やマシマロに対する態度や考え方にも変化があり、前に1歩1歩進んでいるような感覚があった。もう彼女が生み出す作品に出会えないかと思うと辛いが、これを読んでから読む山本文緒作品はまた一味違ってくるのだろうと。精神科医の方が書かれた解説は、彼女の日記(今作品)分析も入っててまた面白い。2022/07/21
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