内容説明
癌に冒された老ヤクザを故郷の淡路島まで運べ。舞いこんだ依頼はたやすいはずだった。だが、謎の追手の襲撃によって、老人と親友が拉致される。しかも、その老人は、五十年以上前にシベリアの捕虜収容所で、凍土に葬られたはずの男だった。組織を裏切った老ヤクザの本当の狙いは何か。殺し屋、ロシアンマフィア、そして日本の闇権力の陰謀と裏切りが交錯しあう中で、探偵碇田が執念の追跡の果てに見たものは…過去の傷痕に引きずられ、闇に蠢く男たちの吐息。信義なき世界でぎりぎりの誇りを全うする孤独な闘いを、壮大なスケールで描き切る、冒険小説の逸品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ken_sakura
10
愉しかった♪( ´▽`)若さを感じる小説なのに、骨っぽさが際立つ冒険小説。上手な小説を読みたいのではない、と思わせてくれるゴツゴツとした感じの佳品。物語の筋より、骨のある登場人物の造型に読まされた。下関から癌に冒された老ヤクザを故郷の淡路島まで運ぶ。病人専門ハイヤー業を営む何者でもなかった頃からの友人から、そのボディガードの依頼を受けた探偵碇田の物語。デビュー作とのこと。おもしろ本棚の先生に薦めて頂いた本。感謝。2016/08/16
ひねもすのたり
8
【Kindle Unlimited】92年初版の本作はハードボイルドの書き手である著作の長篇第一作。 友人とペアを組み、訳ありの人物を目的地まで送り届けるという設定は『深夜プラス1』を思わせるし、紋切型のセリフ廻しも悪くありません。 バイオレンスと混同されることの多い国内ミステリーの中においては貴重な正統派ハードボイルドとして楽しめました。ただ客観的に読むなら粗削りで、キャラクター達の背負う昭和を30年後の若い読者がどこまで読み込めるかはビミョーかもしれません。★4.52023/03/24
たーくん
8
再読→→→癌に冒された老ヤクザを故郷に運べ。たやすいはずの仕事は謎の追手の襲撃により、執念の追跡へ変貌する。過去の傷痕に引きずられ、闇に蠢く男たちの孤独な戦いを壮大なスケールで描いた冒険小説の逸品。2019/01/21
Tetchy
6
久々に真っ当なハードボイルド小説を読んだ気がした。香納諒一デビュー作の本書はハードボイルド小説を書く事に真摯に向き合っている姿勢が感じられ、作家になることに対する並々ならぬ決意という物を感じた。主人公の一人称描写で語られる本書において視線のブレがなく、また時折挟まれる自然描写の雅さなど、物語を形成する風景についても筆を緩める事がない。一つ一つの言葉を慎重に選んでいるのが実によく判る。傑作とはまで行かないまでも佳作であることは確か。2009/12/18
夜梨@灯れ松明の火
3
再読。これも良い香納諒一。2019/08/24