出版社内容情報
密行主義と言われながらも毎年確実に行われている死刑執行。自殺房と呼ばれる舎房で償いの日々を送るひとりの確定囚を通して、知られざる死刑の実態に迫る迫真のドキュメント!
内容説明
死刑囚は罪を犯し、その罪の償いとして絞首刑となる。人を殺したのだから、死んで償うのが当然だ、と考える人は少なくない。しかし、被害者の遺族の気持ちも果たしてそうだろうか。生きて償ってほしい。終生償いのために生きてほしいと考えてはいないだろうか…。密行主義といわれながらも、最近は毎年確実に行われている死刑執行。二十年以上にわたり、“死刑”を追い続ける著者が、自殺房と呼ばれる舎房で償いの日々を送る一人の確定囚を通して、知られざる死刑の実態に迫る。衝撃のドキュメント。
目次
プロローグ
死刑確定
事件の概要
その時はいつなのか
検察の取り調べ
汝の敵を愛せよ、だなんて!…
県警から拘置所へ
自殺房
半年ぶりに父に会う
キリスト教受洗〔ほか〕
著者等紹介
大塚公子[オオツカキミコ]
1942年、旧満州国に生まれる。ノンフィクション作家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
19
改心をした死刑囚を取り上げたルポルタージュです。改心したのは事実なのでしょうが、死刑制度の被害者のように捉えるものではないように感じました。2021/08/22
つちのこ
3
死刑制度はなくならないのだろうか。一方でヒューマニズムの観点から他の先進国と同じように、死刑制度廃止を願うもの、現実には被害者の遺族の怒りと悲しみに同調し、犯罪者を許すことができず、極刑を望む心。私自身の狭い心にさえ、白黒つけれない相反する葛藤が存在する。本作は、前著『死刑囚最後の瞬間』以上になまなましく、読むのもつらい。長谷川敏彦が犯した罪と、改心をした彼を待ち受けている死刑という凄絶な現実。遺族や自分の家族への思いや叫ぶこともできない心の内面をするどく抉り出している。(2002.3記)2002/03/02
ミツ
3
ある一人の死刑囚を例にとり、死刑存廃論を議論する前提事実を描くと共に日本の死刑制度の密行主義を批判する。 著者自身の主張は抑えて小説のように死刑囚、加害者家族、被害者遺族の心情が描かれ、読み物としても面白い。 2010/01/15
うたまる
1
一死刑囚の贖罪の姿を追った死刑廃止論者によるノンフィクション。舞台は半田保険金殺人事件、死刑囚の名は長谷川敏彦。またか、と思う。死刑廃止が普遍的正義ならばどの死刑囚を取り上げても良さそうなのに、好んで選ばれるのはいつも彼だ。それだけ書き手には都合の良いタマなのだろうが、裏を返せば他では筋が悪いということだ。そして予想通り、被害者のように描かれる彼。しかし、著者は知るべきだ。残忍な事件詳細を避け、国家機構を目の敵にし、加えて仏教や遺族への皮肉など、度の過ぎた偏向と不公平さによって逆効果を齎せていることを。2017/01/24
maho
0
この世では罪を償うために死刑になったが、神様の前では赦された者として命を与えられたのだろう。2016/11/29