内容説明
帝都完全崩壊を策した怪人、加藤保憲は“将門の霊”との闘いに敗れ、満州へと去った。世情は軍部の圧力が強くなっていた。その最中、血気盛んな青年将校らを背後から操る怪しげな思想家がいた。北一輝。法華経を信奉し、不敵にも“昭和維新”を企んでいた。そして遂に、“霊告”は下り、昭和11年、2.26の日を迎えたのだった…。サイキック伝奇長編小説第5弾、戦前篇完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
151
この巻では、加藤保憲が満州に去り、魔王こと北一輝が先導する2.26事件が中心となっています。歴史に出てくる現存した人々が活躍する半面、平将門が出てきたりと昔読んだ時よりも今読んでいる方が楽しめます。メソニックのトマーゾという怪人も出てきたりして楽しめます。2016/11/20
saga
54
【再読】2・26事件を特別に扱いたかったと思える第5巻。魔王とは2・26事件を陰から操ったと言われる北一輝。法華経を読誦して超常現象を起こすシャーマンとして描かれている。2・26事件に虚実を織り交ぜた構成だが、魔人・加藤は登場せず。 2021/04/16
ヨーイチ
38
この巻は226事件。北一輝が法華経の題目によって霊力を発揮して日本の革命を画する。隠し味で関東大震災以降に建造された「軍艦ビル」群(これ知っていたけれど、誰の本だったか)と謎の海外組織・フリーメイソン?の暗躍が有る。対抗する人物として石原莞爾。法華経繋がりだけどこの人は霊力を持っていない。ここら辺の人選が面白い。寺田寅彦のように理性・合理の人って区分けがあるようだ。2019/05/02
らすかる
34
二二六事件が絡んでくる! 帝都物語の最大の魅力が実際の出来事や人物と魔力の絡み。悲恋も加わり、ますますページをめくる手が止まりません。2019/04/04
nbhd
26
こと、二・二六事件やら北一輝やらに関しては日本史の教科書で学んだというよりも、荒俣大先生の一大巨編に負うところが大きい、個人的には。帝都物語の中では唯一、加藤保憲が陰をひそめる巻でもあるけど、北一輝はじめ石原莞爾や甘粕正彦(ちょっと大川周明)など昭和初期の一癖ある濃いメンバーが勢ぞろいで(平将門も友情出演!)、加藤色が薄いぶん、フリーメーソンの帝都壊滅計画みたいのも出てきて、薄暗いオカルト具合が楽しい。で、いてメロドラマチックの最たる巻でもある。考えてみると、帝都物語はつくづく優れた歴史書だなと思った。2016/10/27