内容説明
昭和天皇崩御の式典が行われている京都の街中で、偶然、テレビカメラに映し出された一人の伝説の老人。「この男からインタヴューを取ってもらいたい」と上司から指示された人物は、新潟の山奥で四十年もゲリラ活動を展開してきた独立農民党党首・田中角栄その人だった。しかし、私の眼は、老人の側に寄り添う美しい女にくぎ付けになっていた。その女こそ…。来日したCNN特派記者が体験する壮烈奇怪な「昭和」の残照。
著者等紹介
矢作俊彦[ヤハギトシヒコ]
1950年、神奈川県横浜市生まれ。東京教育大学附属駒場高校卒。高校在学中からダディ・グースのペンネームで漫画家として活躍。72年、早川書房の「ミステリマガジン」6月号に、「抱きしめたい」を発表。21歳で小説家としてデビュー。78年には初の長編『マイク・ハマーへ伝言』を刊行し絶賛される。小説の他にも、大友克洋との合作コミック『気分はもう戦争』、日活アクションのアンソロジー・フィルム『アゲイン』、劇映画監督作『ザ・ギャンブラー』などが話題に。また、2003年に発表した長編『ららら科學の子』が第17回三島由紀夫賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナハチガル
12
1ページに1ネタ入れないと気がすまないのか?というくらいな小ネタの嵐にだんだん食傷気味になってきて、本筋や主人公のロマンスに集中できなくなるという弊害があるが、この濃度と労力は前代未聞か。東西に分裂したパラレルワールドの日本を紹介するという体裁で、標準語、関西弁、京都弁、江戸弁が入り乱れ、さらに標準英語は標準語、スコットランド訛は武士語で表記されるという入念さ。翻訳不能、無数のネタ元は日本人でも全て知っている人はまれかと思うが、もしかすると英米人がユリシーズを読むような感覚に近いのかもしれない?A+。2023/02/09
塩崎ツトム
9
1945年から分岐して、日本が東西に分割された世界線で、CNNのジャーナリストが「壁」を越えたり、過去の父の因縁を探したりとハードボイルドに活躍。そんなに真面目な話でもないけど、架空の歴史で風刺もばっちり。なにより井上ひさしの「吉里吉里人」みたいに下ネタに逃げてない。ヒくようなギャグのごり押しがない。2015/02/11
ユウスケ
6
日本分断統治の設定であり、実際の歴史とは全然違う歴史を記しながら、それでいて昭和と言う時代を再構築し、回顧していると言う小説。富士山が原爆によって崩壊、西日本では大阪弁が公用語など強烈な設定で、20年前にはじめて読んだ時はそれらばかりが印象に残り、細かい知識を要する部分についていけなかったですが、20年間かけて著者が伝えようとすることが伝わってきました。 ただ主人公がアメリカ人で、アメリカ風の言い回しで昭和のあれやこれを語るのはやはり強烈な印象を残します。
ともゑ
6
第二次世界大戦後、日本はドイツのように壁で共産主義の東日本と資本主義の西日本に分断されている。そんな日本に取材にやって来た外国人ジャーナリストの主人公。来たついでに父の想い出の女性も探す。謎の組織に狙われたり謎の女性と距離が縮まったり。上巻なのでこれからって所で終了。日本を皮肉る今の感覚でいくと俗に言う不謹慎にも見える危ない描写がちらほら。主人公の微妙に間違ってる日本の諺でちょっと笑わせてくる。期待してたほど大阪感は無かったな。知らんけど。2014/12/14
mapynchon
5
【5.75点】物語の展開上、上巻だけでは点の付け所が無いのは承知。それにしても点が低いのは「ららら科學の子」が面白く、ハードルが上がりすぎていたのかもしれない。確かに日本が東と西に分断され、富士山に原爆が落ち、大阪政府が標準になっているなどのバカ設定も、バカバカしく、しかし本物らしく描いていて面白い。が、ちょっとやり過ぎのような、ギャグが寒いような、そんな感じに思えてしまった。しかし今下巻の出来次第で、ごめんなさい、と謝る結果になるかもしれないが、それは日本式に言うところの「後の祭り」。2010/01/25