感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
29
戦場を描いた作品はどれも悲惨極まる描写がある。だが本著の特徴は語り部が複数いることである。つまり、一人の著者が語る戦争の悲惨さと、複数の語り部が語る悲惨さがことごとく一致し、日本軍がゆくところ多かれ少なかれ、必ず飢餓、餓死、病死、自活、自決、強制動員、過酷な労働といったものがあったことを、本著は抉り出しているからだ。そして、そうした傾向は現代日本でも時々口にされる「自己責任」というものに通じていると感じた。自己責任で最終的にゆきつくのは「自活」であり「自決」を押し付けることだからだ。一時期、年間3万人を2022/08/12
イプシロン
24
多くの日本軍将兵は戦闘で死んだのではない。飢えと病で命を落としたのだ。味方に殺されたといっても過言ではない。その典型が特攻である。書物にせよ、ガダルカナルから先の戦場を様相を詳しく知ったものなら、当然思い当たる帰結である。ことに酷かったのは死傷率80%を超えたニューギニアだろう。通常、軍事学では兵力の60%喪失を全滅という。組織的に抵抗力を失うのが全滅である。インパールの悲劇、ビルマ戦線の悲劇、各島嶼戦の玉砕などなどを「自決と安楽死の戦場」と称した本書の表現は妥当であるし、戦争は狂気であるとしか言えない。2014/12/15
nobody
7
情念による反戦、これが読売新聞大阪社会部の戦争シリーズの売りである。そのためには書き手の新聞記者の人生をかけた魂の絞り出しが必要であるが、そうそうどの新聞記者も戦争の最悲惨を体験している訳ではなく、うまくいかないと黒子アピールのようになってしまう。それを補うために体験者への取材もとっているが、それも新聞記者からのつて頼りであり、話の深さは保証の限りでない。全ての人の話が斎藤喬記者のような深さをもつのは難しい。だがどうも読売新聞大阪社会部のシリーズ本は、話の質の高さよりも黒田軍団記者の生き様晒しの方に重点を2023/08/24
丰
0
Y-202004/08/27
ゴリゾウ
0
何もかもが変わってしまった。生活の不如意ばかりでなく、人間が変化していくことにも私たちは耐えなければならなかった。それに耐えるためには、自分もまた同じように変化するしかないのである。(P255) #10741989/05/31