内容説明
1985年10月17日、東京・ブダペスト。その日、それぞれの地に立つ2人の女子大生は人生を賭けた重大な決心をした―。若き外交官の夫人の座が約束された結婚を承諾した沢木純子、東側の国ハンガリーにおいては、夢のようなアメリカ移住を強く勧められるホルヴァート・アーギ。家族、友情、そして愛。人生の岐路に立ち、激しく揺れる2人。幸せを願い生きる、そのことが放つ光彩を見事にとらえた傑作長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
92
宮本さんの若い二人の女性が主人公の話です。日本とハンガリーにいる若い女性が人生の岐路に立ってその選択を行っていくのですが、そこには様々な事情やしがらみがあったりして一筋縄ではいかないような状況になっています。解説は私の好きな作家の連城三紀彦さんでこの本を読んだ理由の一つでもあります。宮本さんも連城さんと同様に女性心理をうまく描かれていると感じました。2025/03/23
ぶんこ
38
東京とブタペストの2人の女子大生が、運命の電話を待つまでの心のゆらぎが描かれていました。ブタペストのアーギは、アメリカの富豪女性から養女にと、東京の純子は、ロンドンで研修中の外交官見習い村井からの求婚への返事を。 純子は村井を愛してはおらず、返事をする日にも恋人と関係をもつ。逞しい人だなぁ。爽やかとはいかない村井と純子。先が思いやられるというのは、取り越し苦労でしょうか。アーギさんの方は、現在の人間関係を大事にする方と選択し、ハンガリーに残ることを選びました。個人的にはアーギさんの生き方に共感できました。2015/06/27
佐島楓
26
東京とブダペスト、それぞれに住むふたりの女性の物語。この小説は私にはあまりピンとこなかった。二つの視点の必要性や、純子が意中の人とではない結婚をしようとしている気持ちがよくわからなかったのだ。ふたりの女性は、作中のある人物がいうところの「自分の心が相手のゲーム」を繰り返しているのだろうか。その普遍性を書きたかったのだとすれば納得できる。2014/02/13
Shoko
22
「葡萄と郷愁」。この題名、素敵。1985年10月17日。2人の女性が選択を迫られていた。一人は東京、もう一人はハンガリー ブダペストで。それぞれ、その後の人生を決めるであろう大きな決断を。二人の下した決断は異なったものだったといえるけれど、そうさせたものは何だったのだろう。欲望、時間、郷愁。それらのバランスだったのかな。純子とアーギ、その周りの人々にそれぞれ人生があって、そのどれもを愛おしいと感じました。2018/01/13
ふね
11
人生の岐路に立ち、大きな決断に迫られた2人の少女を描いた物語。人生を変えるような選択肢を突きつけられた2人の心の動きが、痛々しくも興味深かった。物語全体に流れる頽廃的な雰囲気も割と好きだった。初めて宮本輝氏を読んだが、肌感覚は合う気がした。次は「蛍川・泥の河」かな。2014/11/13