内容説明
九島喬司は、郷里広島で家業の電器店を潰し、単身上京した。学生時代の身許保証人であった溝呂木のひきで、総会屋に転身した。日本最大の輸送網を誇る日運の株主総会に殴り込み、大物総会屋支店の構図に楔を打ち込んだことで、お涙金頂戴の三流扱いを脱し、大物への階段を昇りはじめた。荒っぽい総会運営を武器に、急速に勢力をのばす九島グループの眼前に、旧勢力の大物たちの影が…。企業暗部に巣くう総会屋への弔歌、商法改正前夜を描く異色経済長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まつうら
42
昭和40年代、駆け出しの九島が大物総会屋にのし上がっていくストーリー。総会屋というと、ロッキード事件絡みの児玉誉士夫のことしか知らなかったが、九島のモデルになっている小川薫は、最後の総会屋と呼ばれるほど有名だったことに驚く。王子製紙や旭光学の株主総会で暴力事件を起こすエピソードは、Vシネマのようでおもしろい。でもあまり現実味を感じないのは、もう総会屋が過去のことだからだろうか? あのピンクレディが小川のカネで誕生していたというのも、驚きのエピソード。解説者が語っているように、裏昭和史のようで興味深い。2022/11/29
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