内容説明
「博打うち」とは本当に因果な商売だ。プロである以上は勝たねばならないが、勝てば勝つほど、客の足は遠のき、挙げ句のはては飯の食いあげだ。この難問が解決できない以上、「博打うち」とは、ギャンブルにのめりこんだ多くの男達の幻想ともいえるかもしれない。麻雀必殺技、“二の二の天和”に骨身を削るイカサマ師を描く「天和くずれ」、ギャングバー経営の女衒の達、ドサ健と寺の息子との息づまる秘技の応酬を描く「天国と地獄」等11編を収録。
著者等紹介
阿佐田哲也[アサダテツヤ]
本名色川武大。1929年東京生まれ。東京市立三中中退。61年に自伝的小説『黒い布』で中央公論新人賞受賞。78年『離婚』で直木賞受賞。『麻雀放浪記』など麻雀小説はペンネームで発表。本名で発表した短編小説「百」は川端康成文学賞を受賞した。89年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
147
私が学生のころ全自動卓が現れ、洗牌から積むまでの手作業(私にとっては休戦時間)が失われた。阿佐田哲也の麻雀小説も手積みなればこそ成り立つ。雀ごろたちの超人的なイカサマ芸を見ていると、私にとって休戦時間だった手作業が、彼らには修羅場なのだと了解される。それにしてもこれは随分と細やかな小説ではないか。一ツモ一打牌に至るまで神経の通った牌の流れがあり、そこから時に助け合い、時に潰し合う人間の意志と運命のドラマが紡ぎ出される。作者の潔癖な観察眼や人生観を(本人にそんな意識はなかろうが)昭和のダンディズムと呼ぼう。2020/10/18
桜井青洲
3
著者の初期に書かれた短編集。捕食被食の鉄火場での色の濃い登場人物達で繰り広げられる心理の駆け引きが醍醐味ではもちろんあるが、それぞれの短編の終わり方や登場人物に結末に漂う哀愁が喜怒哀楽では簡単に表せない。ギャンブルと通した人間ドラマの数々、いい意味で妙な味わい。「天国と地獄」は麻雀放浪記でお馴染みのドサ健と女衒の達が登場、ドサ健はやっぱり良い。2017/02/10
ばー
3
初期の短編麻雀小説集。牌譜が載っていることのワクワク感。麻雀に関わる人々の在り方を描いた群像小説とも読めるし、ゲームに望む人間の心理小説とも読める。短編であるだけの小気味良いさっぱり感が冴える。解説は北上次郎。他意は無いとのことだが、本書についての解説でないところが少し笑える。2013/08/05
ファーラス
2
面白い。筆者はさすが後の直木賞作家。麻雀賭博の話にかこつけて、「玄人」や「カモ」達の様々な人間模様を描いており、純文学とエンタメ小説の融合的な作品。荒っぽい場の駆け引きを経て夢・挫折を熟知する作者には、小説における読者との駆け引き・工夫なんて簡単なんだろうな。同じような生き方はしたくないけど。2011/09/12
さりゅ
2
古本屋で見かけて、ついなぜか手に取ってしまった。予想以上におもしろかったので満足です。ドサ健が墓をぶっ壊すシーンが一番印象に残りました。2010/09/07