内容説明
事の起こりは歴史雑誌に地方の郷土史家が寄稿した奇怪な「十王曼陀羅の地獄絵」についての記事であった。その地獄絵は、桃太郎が閻魔の庁で裁きを受けている絵柄で、瀬戸内海笠岡諸島の一つ奇里島の旧家に伝わっていた。光華学園大学史学科の柳沢英輔教授が、この絵草紙に関心を持って「桃太郎考異聞」として取り上げると、その地獄絵のことを知っているという人物が現われた。教授に調査を命じられた助手の滝連太郎は、こともあろうにアシスタントの武見香代子に下請けに出したのである。香代子は鬼に誘拐され、なんと奇里島の墓地で気が付いた。そばに犬の刺青のある男の八つ裂き死体が…。ご存知滝連太郎の名推理。
感想・レビュー
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HANA
65
短編集。奇祭の夜の殺人とか全滅した村、丑の刻参り、死蝋となった女性、徳川埋蔵金、そして裁かれる桃太郎。これらのキーワードに反応した人は是非とも読むべき。短編故かそれぞれの話のトリックは小粒なように感じられるのが多いのだが、前記の通り主題となっているものが魅力的過ぎるので十分に楽しんで読む事が出来る。やっぱりミステリの魅力っていうのはロマンティシズムを内包していてナンボだと、本書を読んでいるとそう思わされる。最近のミステリも好きだが、土俗と伝奇を孕んでいるものは一部なので、本書を読んでいると嬉しくなるなあ。2020/02/29