内容説明
こんな素敵な文房具に囲まれて暮らしたい!何気ない文房具には、平凡な日常をほんの少しドラマチックに変える、はっとさせられる色や形、そして物語が隠れています。ジム・ジャームッシュが愛用した手帳に誘惑され、フランス製のボールペンにそそのかされ、昔からずっと変わらないデザインの色鉛筆にとらわれる。雑貨に秘められた魅力と、豊かで愛すべきストーリーを、極上のオールカラー写真と共に紹介するエッセイ。
著者等紹介
片岡義男[カタオカヨシオ]
1940年東京生まれ。74年に『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野性時代新人賞を受賞。かつてないスタイルで若者の心象風景を描き、70年代から80年代を通して時代の圧倒的支持を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
123
文房具について、片岡義男が淡々と語っていくエッセイ集。作者が撮影したカラーの写真が何枚も収録されている。いずれも美しい写真で、ずっと眺めていたい気持ちになる。文房具について語っているだけなのに、本当に面白い。文体の力だろう。感傷を排した鋭角的な文体で、ヘミングウェイやハメットに似たところがある。その鋭角的な文体から滲み出てくる透明な詩情を堪能した。2016/07/07
goro@the_booby
51
祝800冊目は片岡義男。この頃、文房具と言えば100均で済ますような輩にとっては掲載された鮮やかな文房具が羨ましです。紙が出来、鉛筆が出来、人の文明が大きく発達していったのでしょう。誰でも使う文房具がこれほど奥行きがあるものだと驚きです。手帳を買っても使い切れない身としては躊躇うけどモールスキン欲しいなぁ~(^.^)2017/03/24
Tenouji
16
和田哲哉氏の本の後に読む。こちらは、昔からある主に海外製の文具に対する、2000年頃の本。片岡氏の写真:光と色に対するこだわりも感じられる。カラフルな写真とクールな文章を読んでいると、なんだろう、不思議な感覚にとらわれる。片岡氏の工業デザインに対するマテリアリズム的な視点は、恐らく、インスタグラムとSNSでつぶやく、現代の我々の目の奥底にこびりついているものではなないかと…消費される「物」を記述することで、浮かび上がる「事」という構図は、はてさて、どうなるのでしょうね。2018/03/04
Koki Miyachi
10
文房具を自ら撮影して書く面白いスタイルのエッセイ。所有している文房具や気に入って買った文房具。それに向き合って文章を書く。写真に写っている文房具のコトだけ書く。書き手にはなかなか辛い形だろう。普段から愛着があり使っているモールスキンのノートなどについては、深い見識や興味深い視点がとても面白い。一方、語る事が少ないアイテムのときは大変だ。写真の撮り方の工夫やら、サイズについての考察やその文房具との出会いなど。苦しいながらも何とかエッセイに仕立てる。自分は同じ題材でここまで書けない。そこは流石だと思った。2013/07/19
ホークス
7
美しい文房具の写真と、その美しさを愛する著者の抑制された語りがとても良い。著者の小説を読んだ事はないし、写真の知識もないが、そんな事は関係なく楽しめた。文房具を理屈抜きに愛しながらも、その存在意義や人間との関係について深い考察を巡らせてもいる。全体に著者の強力な美意識が徹底されていて、心地よかった。2014/09/30