出版社内容情報
山田 風太郎[ヤマダ フウタロウ]
著・文・その他
片岡 忠彦[カタオカ タダヒコ]
著・文・その他
田島 昭宇[タジマ ショウウ]
イラスト
内容説明
お市の方へ続く途上の邪魔者をことごとく排除し、秀吉は天下に手を掛ける。だがその時、焦がれ続けた彼女はこの世を去った!絶望する秀吉だったが、彼女に生き写しの遺児・ちゃちゃ姫を手に入れ、遂に切望を果たす。老醜の権力者の欲望は留まることを知らず、肉欲、殺戮、大遠征と、あらんかぎりの悪と権謀の愉しみを開花させ―。女から愛されず、1人の女人と欲に溺れた“人間・秀吉”を正史の背面から描ききった大傑作。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922年兵庫県生まれ。東京医科大卒。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞を受賞。その後、58年『甲賀忍法帖』を発表し忍法ブームに火を付けた。また、『警視庁草紙』『幻燈辻馬車』等で、開化小説にも新領域を開いた。2001年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
271
上巻でおいしいところはほぼ描ききってしまっていただけに、下巻では、ひたすら老蒙した秀吉の姿ばかりが目について、読むスピードがやや低下。秀次や利休とのことを、もっと陰謀めいたかたちで広げてくれたら、より楽しくなった気がする。特に朝鮮出兵あたりは退屈。ラストで家康が心中独白しているように、人生を思うままに走りきったという見方からすれば、信長や家康、その他の誰よりも、秀吉は勝者といえるのかもしれない。その事実を、女性というわかりやすい欲望の対象を置いて提示したのが、この太閤記の際立った点といえる。2022/09/07
優希
48
天下を手にする秀吉。想いを寄せていた彼女に生き写しのちゃちゃ姫を手に入れ、切望の全てを果たしたように見えました。しかし、権力者となった故の欲望は消えることがないのが欲の象徴に思えます。正史の背後の秀吉の姿を知ったようです。2021/12/28
きょちょ
27
伊達政宗が恭順の意を示し、北条家を滅亡させることによって、秀吉の天下統一がなされる。 しかし、このころから彼は、単なる強欲なエロ爺いでしかなくなる。 民へのあまりにも不当な税・労役、そして朝鮮出兵や養子とした関白秀次を含む家のもの全員の惨殺など、狂気の沙汰である。 少し忍法的話が出てきたのは、逆に残念。 ★★★2019/04/11
Porco
22
賤ヶ岳まではギリギリ英雄譚で後は惨憺どころか無惨。 【畜生塚】で語られた「ただ「もてる男」への憎悪だけであった、そしてまた「もてる男を愛する女」への憎悪だった」というモノローグ。本作の秀吉像はこれに尽きる、要するに行動原理は「リア充爆発してやる」であり、太閤まで上り詰め手に全てを「もてるひと」にはなったが「もてる男」にはなれなかったコンプレックスこそが怪物秀吉の正体だ。 (1/2)2024/06/08
ken_sakura
19
通して、とても面白かった\( ˆoˆ )/下巻はとうとう市姫を失い、茶々では心充たされなかった秀吉の後半生。市姫の肘鉄をくらって、「天下も女も手にいれる」と独り言ちた秀吉。上だけ鎧かぶとをつけて、12歳の姫様(前田利家の娘)の処女を奪うのを手始めに、やりたい放題で余計に女性に嫌われる日々。賤ヶ岳の合戦までの抜群の学習能力と陽気に忍ぶ秀吉は市姫と共に死に、その後を天下人にしてやりたい様にやって生きた秀吉を最後に評する家康(山田風太郎)の述懐が良かった。2017/02/24