内容説明
関西の瀟洒な家で、車椅子の夫、老母、パート夫人、ミド嬢、数数のぬいぐるみと共に忙しく暮らす田辺さん。ある日、夫に新たな病が発覚。別れの時を予感しながら、看護と介護と作家仕事を切り盛りしていく。毎日の食卓、原稿執筆、夫の憎まれ口、お葬式、納骨―。作家のありふれた一日から主婦の一大事まで、日々の思いを敏感に、ユーモラスに書き留めた人生日記。発表時、感動の声が続々届いた話題の書。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年、大阪生まれ。樟蔭女専国文科卒。63年『感傷旅行』で芥川賞、87年『花衣ぬぐやまつわる…』で女流文学賞、93年『ひねくれ一茶』で吉川英治文学賞、94年菊池寛賞、98年『道頓堀の雨に別れて以来なり』で泉鏡花賞を受賞する。2000年文化功労者に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
113
「かわいそに。ワシはあんたの。味方やで」病院の枕辺で独り泣く妻に御夫君がつぶやく。互いを信頼し思いやる夫婦仲に、思わず目頭が熱くなる。本作は最愛の御夫君を看取られたおセイさんの約10ヶ月間の日記だ。けれど湿っぽさは微塵も感じられず、彼女の向日性に根ざした朗らかでユーモラスな筆致がとても魅力的だ。苦しみも悲しみも不安も、呵々と笑ってやり過ごす。多忙を極める中での看護だが、作家として文学に向き合うことが彼女の救いとなったのかもしれない。読了後逆に私が励まされ元気をいただいて、深く感謝。佳き哉、面白き人生!2022/02/27
優希
80
日々の想いをユーモラスに語る日記ですが、心に刺さりました。大変なことを明るく捉えられるおせいさんが凄いとしか言えません。カモカのおっちゃんとの最期の日々が悲しいですし。別れを見据えながらも前向きにいられる力に感動します。2018/05/17
kei302
55
源氏物語他の講演、実母の介護だけでも大変なのに、怒濤の執筆量(知らんけど)とカモカのおっちゃんが入院する病院へ通う日々。葬儀の時の弔電、泣ける。文緒さまの日暦は未だ読む気分になれず……。2022/11/08
メタボン
37
☆☆☆★ カモカのおっちゃんとの最期の日々がせつない。70歳過ぎて、原稿書きに講演に介護にと走り回るおせいさんのバイタリティに感服。一度講演を聴いてみたかった。2018/02/07
pirokichi
23
2001年6月から2002年3月までの日記。2004年の発行当時に単行本で読んだのだが、再放送中の自伝的ドラマに影響されこのたび文庫本を購読。お母様の介護とおっちゃんの看護をしながら作家としての執筆、講演等をこなす日々。「いささかは苦労しましたといいたいが、苦労が聞いたら、怒りよるやろ」の精神で、何事にも明るく取り組む姿勢、バイタリティにはあらためて感服した。ぬいぐるみを子どものようにかわいがり言葉を交わし合う著者。実は私もそうなのでスヌーたちに再会できてうれしかった。主亡き今、どうしてるだろうか。2022/05/28
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- 和書
- 決定版日本の城