感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とまと
2
昭和初期から戦時中を経て戦後の頃までの大阪市内北部を舞台として書かれた、お聖さんの自伝的小説。エッセイや恋愛小説ではなかなか垣間見れないお聖さんの思春期が覗けたような。小松左京氏の解説が、私がお聖さんに憧れる理由を考えるヒントになった。また、日本が経験した戦争について知りたいと最近思う。「いつかまた」と言って別れる機会は、人生で二度と遭遇しない貴重な瞬間である。いつの世も少なからずそれはあるが、戦時下では尚のことである。飛躍するようやけど、もう二度と会わないかもしれない人たちが元気でいてほしいと思った。2011/11/18
とまと
1
読了して1か月以上経つが、考えれば考えるほどよくできた小説である。戦争という悲惨な体験は多くの人のトラウマにもなった。田辺聖子は戦争体験を自己との距離を保ってメルヘンにユーモラスに書ききった。この精神力と人間力と技量に感嘆。また、書くことで体験との距離を保つ、体験を客観的に見るという作業にもなったのかもしれない。2011/12/23