角川文庫<br> 一歩の距離―小説 予科練

電子版価格
¥550
  • 電子版あり
  • ポイントキャンペーン

角川文庫
一歩の距離―小説 予科練

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 281p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784041310212
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

司令は静かな口調で命令した。「戦局を一変させるべく、帝国海軍では、この度、必殺必中の兵器を動員することになった。全員、目を閉じよ。兵器への搭乗を志願する者は一歩前へ!」塩月は躊躇した。前に出る練習生の靴音が聞こえる。出なければ、出なければ。死ぬために来たのに、何をためらっているのか。両親や兄弟のことを思った。脇の下を冷たい汗が流れる…。生と死を隔てる“一歩の距離”を前にして立ち竦む予科練の心理の葛藤を通して、戦時下の青春群像を描いた表題作、他一編。

著者等紹介

城山三郎[シロヤマサブロウ]
昭和2年、名古屋市生まれ。一橋大学卒。昭和32年、「輸出」で文学界新人賞を受賞後、本格的な文筆生活に入る。昭和34年、『総会屋錦城』で直木賞受賞。その後、組織とそこに生きる人間の問題を深く追究した話題作を次々と発表。日本の経済小説の先駆者といわれる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

シュラフ

16
すでに太平洋戦争の敗色が濃くなった頃の予科練における若者たちの物語。国を護るべく思いをもって予科練に集まってきた若者たちであるが、飛行訓練のための飛行機ももはやない。そこでの毎日はパイロット養成のための技術習得というよりも精神を鍛えるための訓練の繰り返し。指導員は戦場で生き残った古参兵で荒くれ者で、訓練の名を借りた”しごき”の日々が続く。個人の人格もなければ、生命すらも軽んじられる狂気の組織である。そんな中、いよいよ戦局は厳しさを増し、若者たちは特攻志願を迫られる。生死を分ける一歩が重たすぎる。2014/05/07

wearnotequal

9
特攻に志願するものは前に出よ。 その一歩は今では想像できないほど重いはず。判断できない若者も無理に前へ出た。そんな中での日常の描写は興味深い。震洋は知っていたけどブリキのボートに自動車のエンジンで特攻なんて現代ならテレビのバラエティー様柄。それに有無を言わせず命を掛けさせられた当時の若者も悲惨。2015/01/18

さるぼぼキング

7
たった一歩前に出るかどうか、死と確実に直結したその一歩を踏みだす決断を16,7歳の少年にある日突然求める、この残酷さは到底理解できないもの。読んでいてただただ身につまされる・・・ 軍隊の日常もマンガのような苛烈さで、戦中を生き抜いた人も出身階級によって軍隊や戦争に対する認識が異なるのもうなずける。2013/11/05

あられ

5
再読 学生のころに読んだ。あの時は出てくる人物に年齢が近かったせいか、自分に重ねて「一歩がだせるか?」と読んでいたように思う。今は年を重ねて、純粋な心の若い世代が、大人から聞かされる、教えられる、与えられるもので、その都度まっすぐに突き進むさまにドキドキした。戦争しに行かない…今の人は何よりもそれを心棒にしてほしい。淡々とその当時の状況を描いた良書だと思う。2018/01/30

シャチ

4
知人の薦めで本書を知り興味を持って読めました。敗戦末期将来有望な16才の若者達が予科練に志願し現在では考えられないほどの理不尽な環境の中で耐え青春を過ごし逝きて散っていったかを隊員らの目線でリアルに表現されていました。予科練生は精神年齢がはるかに高く平和ボケした我々が恥ずかしく思うが、予科練生は勇敢かつ荒削りで衝動的な行動には共感できる。しかし飛行兵として志願した若者達を軽易で疑わしい簡易ボート「04艇」に乗せてたのは情けない海軍だと強く思った。

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/386725
  • ご注意事項

最近チェックした商品