出版社内容情報
一柳家の当主賢蔵の婚礼を終えた深夜、人々は悲鳴と琴の音を聞いた。新床に血まみれの新郎新婦。枕元には、家宝の名琴”おしどり”が……。密室トリックに挑み、第一回探偵作家クラブ賞を受賞した名作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
358
日曜日なのに夜遅くまで仕事して帰って来た俺はすっかり疲れているにも関わらず、ここ数日夜な夜な読んでるこの本に取り憑かれ、今夜中の2時だがようやく読み終えて、頭が芯から疲労してるにも関わらずこうしてレビューを書いているのはとにもかくにも本作収録の三作品、特に「車井戸はなぜ軋る」の物語の濃密な禍々しさにトラウマ級の衝撃を受け、ああこれはきっと一生忘れられないなどと思いながらすっかり衰えた俺の記憶は全くあてに出来ないからであるのだが、眠いのにこうして書いていたら我ながら訳がわからなくなって兎に角、面白かった。2023/12/11
へくとぱすかる
322
金田一初登場作品である「本陣」には、探偵小説界をふりかえった記述が多く、名作へのオマージュのようだ。ここ数日読んだ作品はすべて戦後に書かれ、地方の旧家の因習や封建的要素、社会の古い面を告発しているようにも読める。金田一を登場させるための設定がよかった。日記について書かれた内容は、作者が編集長だった出版社での経験を思わせる。「黒猫亭事件」は「本陣」に負けないすごい作品。冒頭の章がまるで読者への挑戦だし、何より金田一が作者に会いに行くというシーンが、虚実のあわいを行くおもしろさ。トリックと謎解きが優秀すぎ。2020/04/24
夜間飛行
304
トリックはまともに考えても解けないし、動機は特殊な感情から出たもの。つまり現代から見ると骨董扱いされても仕方ない…はずなのに、なお燦然たる輝きを失っていない。一つには本格ミステリ黎明期の作品であり、あらゆる可能性が詰まっているからだろう。しかしそれだけではない。この作品で重要な意味を持つ「家」中心の価値観は私の親世代にもまだ残っており、それが家の内外から崩れていく感覚は私にも実感できるのだ。旧家の暗がりにロジカルな空間を作りあげたこの作品は、戦後74年を経た今もなお古い日本への挽歌として心に響くのだろう。2019/01/27
こーた
272
名探偵金田一耕助のデビュー戦。アメリカ帰りの若き青年探偵は、元麻薬常用者の推理小説マニアだ。挑むは欧米の作品を模した密室殺人。琴と日本刀、屏風を使ったトリックは、隙間や陰翳といった日本家屋の特性とよくマッチして、やはりミステリマニアの作者による、真の和製ミステリを創ってやろう、という気概と挑戦に充ちている。山陰の名家、三本指の男など、以降おなじみとなる金田一ワールドも満載。表題作ほか、のちの代表作の原型ともいうべき「車井戸はなぜ軋る」、やはりミステリの王道、顔のない屍体に挑む「黒猫亭事件」の二篇も良い。2021/02/06
ehirano1
265
「本陣殺人事件」について。封建的価値観が生み出す悲劇になるのは相変わらずでした。今回は、日本家屋ならではのトリックが斬新で、その解決に至る過程はシャーロック・ホームズの消去法(=不可能を全て消去すれば、残ったものが如何に奇妙な事であっても、それが真実となる)のようでもありました。2025/11/08




