内容説明
閑職に左遷されて一年。五十二歳のサラリーマン神田久時は、いつものように定時に退社した。ところがその日久時は、内ポケットに覚えのない大金を見つける。一体何の金だろう。訝しさを感じながらも、久時は結局、その金で夜の街へと繰り出した―ささやかな解放。しかし、やがてそれをあっさりと打ち砕く、苦々しい「現実」…。中年会社員の失意の一夜を追った表題作ほか、幸福を求めてさまよう者たちを待ち受ける思いもかけない失望や裏切り、そして死を、乾いたトーンと哀感に満ちた筆致で描き、時代の暗部を浮き彫りにした珠玉短編集。
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- 和書
- 棺の女 小学館文庫