出版社内容情報
生命保険会社・永和生命では、70歳までの定年延長を目指している。
一方人事部の加納は、高齢者のやる気のなさに手を焼いていた。
彼らは朝早く出社するものの、仕事もせずにふらふらと社内をさまようことから、“妖精さん”と呼ばれていた。
上長に命じられ、“妖精さん絶滅作戦”に乗り出そうとした矢先、会社を揺るがす大問題が発生してしまう。
内容説明
金融系人事のエキスパートとしてキャリアを重ねてきた加納英司は、42歳にして大手生命保険会社の永和生命に転職する。「構造改革推進室長」という肩書とともに迎え入れられた加納に与えられた任務は、働かないシニア社員、通称「妖精さん」たちを絶滅させることだった。あらゆる手で追い出しを謀る加納に対抗し、シニア社員は「妖精同盟」なる組織を結成する。社会問題を多様な視点からコミカルに描いた痛快お仕事小説!
著者等紹介
荒木源[アラキゲン]
1964年、京都府生まれ。東京大学文学部仏文科卒、朝日新聞社に入社。2003年『骨ん中』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
236
現実で起こりうる世代間の軋轢というか、俗にいう「働かないオジサン」問題を、かなり戯画化して題材にとった作品。妖精さんという造語だけでも面白い。実際に使われているのだろうか。最後はなんとなく丸く収まった雰囲気に落ち着いているが、現実世界ではそうは問屋がおろさないと思う。散々仕事をサボり倒していた人が、一度だけ業務にあまり関係ない人命救助に役立っただけで役員にまで返り咲いてしまう会社では、絶対に社員の中に膿をためてしまう。この手の作品では、最終的に会社を悪者にしがちだが、それだけでは少し浅いような。2023/10/31
おしゃべりメガネ
121
今年、遂に?50の大台にのる自分としては決して他人事ではない話。主人公は金融系人事のエキスパート「加納」は42歳、大手生命保険会社のとある任務を手掛けるコトに。その任務とは'働かない'シニア社員こと通称'妖精さん'の人員整理になります。今は自分も管理職となり、一部のシニア社員に関しては思うトコがあります。「加納」の人事施策もなんのその、「妖精」たち、働かないシニア社員達は同盟まで組んで対抗する始末に。なんとか辞めさせたい「加納」と意地でも辞めない「妖精同盟」たちの一進一退の攻防がなかなかシリアスでした。2025/01/03
ででんでん
66
妖精さんの生態?の描き方がエグうまい。実在されるのかはわからないけど。妖精さんレベルではないが、職場でモヤモヤすることはたくさんあるから、思わず感情移入してしまった。後半は、全く違う方向へと転換していく。ターゲットは妖精さんから魔女へ?こんなふうにうまくいくかは別としておもしろく読ませてもらった。2023/12/18
どぶねずみ
35
最近よく聞く言葉。役職定年というのは私自身にも10年以内にやってくる。今、間近に役職定年を迎えた人たちのそばで働いていると、面倒くさい人たちだなぁと感じることが多い。こちらが素直に接しても臍曲げた会話しかできなかったり、持ち上げてやる気を起こさせても悉く覆されたりと腹立たしいことばかりだ。本書の生保会社も例外ではなく、人事が「妖精さん」一掃プロジェクトに取りかかり、私も応援したくなったが、急にプロジェクトの趣旨が変わって妖精さん同盟と結託する結果になるのはどんでん返しというより、無理矢理感があったかな。2025/02/13
空のかなた
31
痛快!早朝に出勤、社員食堂で時間を潰してフレックスタイムで早々と退社。1日の半分は席を外しているから、居るか居ないか分からない役職定年後のシニア社員を「妖精さん」と呼ぶところから始まる。会社を食い物にする妖精さんを、なんとか退職させる為に、ハットハンティングされ人事部に着任した加納さんが主人公。妖精さんも黙っては居ない。同盟を組みあの手この手。ついに加納さんは胃潰瘍に。でも、本当に会社を食い物にしている悪党は妖精さんではなかった。そこからがこの小説の山場。働き方を考えながらも笑える一冊に。2025/03/09