出版社内容情報
機知とユーモアに富んだアフォリズム、エッセイ集昭和10?11年。生活、文学の凄絶な葛藤のなか、26歳の時に「晩年」と並行して書き記した「もの思う葦」、志賀直哉ら既成の文学者に異議を唱えた「如是我聞」など、全創作時期におけるアフォリズム、エッセイ集
太宰 治[ダザイ オサム]
著・文・その他
柳 美里[ユウ ミリ]
解説
内容説明
大学落第から入社試験の失敗、鎌倉山での自殺未遂、腹膜炎とパビナール中毒の悪化、芥川賞落選…。生活、文学の壮絶な葛藤のなか、二十六歳で身を刻むように書き著した表題作「もの思う葦」のほか、文壇の老大家、志賀直哉に命を賭して異議を唱えた「如是我聞」まで、自己を凝視し、文学論から人生論、日本人論にまで広がる、類まれなエッセイ、アフォリズム集。
目次
もの思う葦
碧眼托鉢
悶悶日記
思案の敗北
「晩年」に就いて
一日の労苦
答案落第
春昼
鬱屈禍
知らない人〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
名言紹介屋ぼんぷ
18
『甘さを軽蔑する事くらい容易な業は無い。 そうして人は、案外、甘さの中に生きている。 他人の甘さを嘲笑しながら、 自分の甘さを美徳のように考えたがる。』#読了2023/11/16
こうすけ
17
面白い。志賀直哉をボロカスにこき下ろしている。『晩年』が読みたくなった。2021/08/15
東京湾
13
「苦しみ多ければ、それだけ、報いられること少なし」太宰治が小説創作と並行して書き残した随想・アフォリズム集。この作家は本当に読者に対するサーヴィスが巧いなと思う。お道化ていながら不意に真理を突き、苦悶していながら不意に舌を出し、真摯でありながら諧謔に満ちている。襟を正して拝聴するというよりはむしろその逆、お互いに胡座をかいて対座し談笑するような気持ちで、愉しく読んだ。戯作精神が徹底されている。可笑しくもあり、身につまされることもあり、太宰文学の発想の源流を垣間見るという点でも一読に値するエッセイ集だ。2019/09/10
まつどの理系こうし(まりこ)
8
昭和十年連載の「もの思う葦」から昭和二十三年連載の「如是我聞」までのエッセイ集的なもの。如是我聞での志賀直哉こき下ろしが凄まじかったけど、言わんとしてることはなんか分かる。その他にはお茶目な部分も見せて、これ、私生活で何かやらかしたな、と透けて見える記述(なんかちょっと反省してたり、拗ねてたり)が笑えるところもあった。2022/08/11
うぃっくす
7
前半くどくどしてて退屈だったけど如是我聞はすごくよかった。大嫌いだけど志賀直哉大好きなんだね。批判してる内容が全部コンプレックスの裏返しでかわいかったよ。そして暗夜行路どうしても退屈で読めなかったこと思い出した…。太宰は周りからの評価がどうしても気になってエゴサーチしては後悔する小心者だけど文学と自分に対して誠実であろうとする人って感じよね。中二病の神様。偉い人がよくやる批判されたあとにやる上品を装った苦笑を伴い軽くいなそうとする卑劣なしみったれた癖、っていうのがすごくよかった。これが一番面白かった。2022/08/23