出版社内容情報
組織の論理の中、いかに、人間でいられるか―。 風太郎賞受賞作家の会心作
内容説明
出版社課長・秋吉の耳に衝撃的な情報が届いた。梶原局長の息子が謎の転落死を遂げたという。近く「引きこもり・不登校対策」を打ち出す新時代の高校をつくるという一大プロジェクトに邁進していたときだった。娘の不登校経験もあり事業に心血を注いできた秋吉だが、プロジェクトは一時中止。梶原の息子は自殺だったという噂が社内で広まり、会社上層部は隠蔽に動く。少年の死という状況のもと、自社の利益追求と保身に汲々とする上層部に秋吉は抵抗を試みるが―。信頼できない上司、暴走する部下、情報戦と化した社内派閥抗争。もはや社内に信用できる者はいない―。志を持って教育事業を推進してきた秋吉の運命は?少年の死の真相とは?
著者等紹介
月村了衛[ツキムラリョウエ]
1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
280
月村 了衛は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者の最新作は、新時代の高校プロジェクト企業ミステリでした。もしかしたら現実的なのかも知れませんが、白日の下に晒されず、全てが玉虫色、不完全燃焼のまま終了しました。 https://kadobun.jp/trial/hkjt/eeat6hrfa6o8.html2020/12/02
しんたろー
244
出版社課長・秋吉が新しい形の高校を創設するプロジェクトに邁進していたが、尊敬する上司の息子が不審死したことで社内の権力闘争に巻き込まれ、プロジェクト危機を回避する為に奮闘する物語…池井戸作品のようなサラリーマンもので、敵と味方が錯綜し不穏な空気と二転三転する展開でハラハラする。教育制度の問題提起もあるが中途半端な感じなのと、肝心の秋吉がブレブレなのが残念。脇役の部下・前島、人事課・飴屋は立っているし、宮仕えの悲哀は共感できた。近作はどれも上々ではあるが、そろそろスカッとするアクションものも書いて欲しい♪ 2021/01/15
美紀ちゃん
145
新しい形の学校、、、どうなんだろう?学校って色々大変なのがわかっているので、そんなに簡単ではないような。でも居場所としての学校は必要。よりどころ?考え方はわかる。すでにそういう学校はある。局長の息子の自殺の真相は、なるほどという感じ。かわいそう。でも不登校になった原因は?秋吉さんの会社での苦悩も。色々考えさせられた。2020/12/12
ケンイチミズバ
143
月村作品なのに銃撃戦がない。企業戦士は登場するが兵士は登場しない。サラリーマンの世界は確かに自分の経験からも業務遂行能力以外に派閥争いなどという無駄な労力を傾けなくてはならない悪しきものがあるのはわかる。教室で起きるイジメにも似た理不尽な異動や懲罰人事によって派閥の力の誇示みたいなものもある。偏見も偏差値も偏りという字が使われているが教育もそんな大人が係る以上、美しい理念の裏にはきれいごとではすまない世界があるのだろう。月村作品にしてはパンチの欠ける、どうした月村、これじゃあ池井戸潤じゃないかとも思った。2021/01/04
うののささら
126
いじめ問題に切り込む民間企業の話。いじめっていつまでたってもなくならないな。きっと無くす努力してないからだな。無能で無責任な信用できない教師の学校なんて時間の無駄。なんで塾に行かないと勉強が理解できないか不思議でならない。塾が学校だったらいいと子供の頃からずっと思っていた。個性を発揮する環境をつくり、それぞれの能力の多様性を教え自分の能力がなにに役にたつか、早い段階でわかるといいな。良い悪い刻々と変わるなか、見てる人はちゃんと見て評価されてよかったです。2021/01/07