出版社内容情報
十六歳になる孤児の千世は、本願寺の間諜組織「護法衆」の一員として育てられ、篤い信仰心と類まれな戦闘技術を身に付けていた。信長と本願寺の戦いに身を投じた千世の運命は──。著者渾身の長編歴史小説。
内容説明
織田信長の伊勢攻めにより、家族を失った千世は、本願寺の間者集団の棟梁・如雲に拾われた。三年後、厳しい修行を乗り越え十六歳となった千世は、本願寺護法衆の忍びとなる最後の試練を生き抜いた。だが、本願寺の敵、織田信長は、大坂本願寺の立ち退きを要求し、摂津まで侵攻してきていた。そして千世にはじめて戦いの命が下される―。
著者等紹介
天野純希[アマノスミキ]
1979年、愛知県名古屋市生まれ。愛知大学文学部史学科卒。2007年、『桃山ビート・トライブ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。13年、『破天の剣』で中山義秀文学賞を、19年、『雑賀のいくさ姫』で日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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★Masako★
84
★★★★信長と大阪本願寺の11年にも及ぶ戦い「石山合戦」。信長軍に家族を殺され、本願寺の間者集団の忍びとなった千世を中心に本願寺側に関わった者たちからの視点でその戦いの始終を描いた作品。「仏敵・信長と戦え。進めば極楽、退けば地獄ぞ」と、浄土真宗の教えを歪めて民を煽り私利私欲に走る坊官たち。門徒を守る為に反旗を翻す者、本願寺を恨み滅ぼそうとする者。そして法主・顕如の大きな賭け…後半、全ての思いがぶつかり戦い合うシーンは一気読み。もう少し千世視点の話が欲しかったが、読み応えのある歴史エンタメだった【図書館本】2020/08/26
ずっきん
81
おお、女忍者物かあ♪と『雑賀のいくさ姫』系のつもりで開いたら、ガチの石山合戦記であった。女間者「千世」を軸に、本願寺側から語られる十年に及ぶ合戦の、情け容赦のないこと凄まじい。後ろでは「極楽浄土」を振り回す腐れ坊官ども。眼前には撫で斬りにせんと構える織田勢。逃げ場なく翻弄される門徒達。あまりの理不尽さに、歯ぎしりし、ぐったりするものの、緩急つけた見事な語り口に読む手は止まらない。ああ、面白かった。これはもう、著者の筆致というかリズムが好きなんだなあ。欲をいえば、千世や重蔵をもっと分厚く読みたかったかな。2020/12/16
巨峰
60
石山合戦をしっかり捉えた作品。親鸞の教えと矛盾する本願寺教団の教えなどもちゃんと描かれていると思った。2020/07/24
星群
40
大学の卒業論文で『一向一揆』をテーマにしたので、この本はとても興味深い一冊でした。〝進めば極楽 退かば地獄〟〝仏敵を倒して極楽往生〟凄まじい時代だったんだなぁ、としか言えない。こんな時、もっと語彙が欲しいと思う。本願寺や比叡山など、大きなお寺の腐敗を見せつけられて、やや気持ちが滅入った。2022/07/18
ロマンチッカーnao
26
本願寺と織田信長との戦い。初めて読むので、こういうことだったのかと思いながら読みました。めっちゃ面白かった。千世という忍者視点で進むので、腐れ坊主どもに吐き気がした。しかし、信長の神から選ばれたとしか思えない、強運はすごいですね。この作家さん他のも読みたくなりました。2020/09/16