出版社内容情報
中山望は、四季折々の花が咲く庭のある家で、母と姉と妹と暮らす。ある日、上の姉が娘を連れて帰ってきて、女5人との生活が始まった。家族や幼なじみと過ごす時間は、“何も望まない”望を変えていく――。
内容説明
四季折々の花が咲く庭のある家で、母と姉と妹と暮らす望。大学を卒業して2年以上、近所のマンガ喫茶で淡々とアルバイトする日々を送っていた。だが、ただでさえかしましい家に、上の姉が娘を連れて出戻ってきた。女5人と過ごす日常の中で、人生に何も望まなかった「望」が、少しずつ変わっていく。友達以上恋人未満の幼なじみや憧れの女性、神出鬼没の烏天狗。下北沢に住まう人々のカラフルで愛らしい日常をみずみずしく描く。ふたりの姉と妹に挟まれて育った男子の恋と仕事と、決意の物語。
著者等紹介
畑野智美[ハタノトモミ]
1979年東京都生まれ。東京女学館短期大学国際文化学科卒。2010年、地元の複雑な人間関係のなかで生きる若者たちの姿をいきいきと描いた『国道沿いのファミレス』で第23回小説すばる新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
papako
84
下北沢にアパートと土地持ってる家の一人息子の望。フリーターしながらのらりくらり生きている。下北沢という街の空気感を感じられました。幼なじみあまねの『なんでもあるけど、何もないじゃない』この言葉がこの物語を象徴してる気がする。林太郎がんばれ!あとがきが希望があって一番好き。2020/09/23
アッシュ姉
79
なにげない日常を何とも読ませる畑野さん七冊目。下北沢に暮らすとある一家。土地持ちで定職に就かずとも生きていけるフリーターの長男に鼻白んだり、とんでもな理由で別居する長女に唖然としながらも読む手が止まらない。うまく行き過ぎない現実と登場人物にリアリティがあり、見ていて飽きないのだ。欠点にもフォーカスが当たっているので、腹が立ったりもどかしく感じたりもするが、最後は応援したくなる。面倒くさい家族だなと思う反面、実に羨ましい家族だった。彼らのその後がちらりと分かるあとがきが嬉しい。2020/08/04
kei302
63
畑野さんの作品ではこれが一番好き。文庫化で単行本のその後が付け加えられたと知って読んだ。自分は家族の拠り所になると、口には出さないが無意識に態度に出ている望の一見クールで頼りない姿が読んでいて心地よい。四季折々の花々が咲き乱れる庭があって、それを当り前のように思って生活してきた中山家の長男:望。幼なじみのあまねは「ここにはなんでもあるけど、何もない」と言う。望、あまねちゃんの大切さを認めるのが遅すぎだよ。続編出てほしいな・・と思うような文庫本の終わり方。期待してしまう。 2020/10/04
ぶんこ
57
東京に家と親の商売(アパート経営?)のある長男、しかも他には男の子がいなくて、女の子ばかりの家の典型のような一家の物語。周囲の女性たちに押され気味の望君が優しくて微笑ましい。この一家の、おばあちゃんの代からのいい意味での世話焼きな大家気質からの人付き合いと、下北沢という土地柄もあるのでしょうが、山の手の下町感覚があって面白い。長姉の、望君や文乃さんの顔をひっぱたく横暴さや、意味不明の実家戻りには共感できないままでした。2021/08/18
エドワード
45
渋谷の真中で、回覧板を回す婦人を見たことがある。当たり前だが、東京でも市民の普通の暮らしがある。下北沢の一角に一軒家を構える中山家。社会人になっても実家暮らしの姉弟妹、4人家族の元へ長女が幼い娘と戻って来る。東京の人間は、一念発起しない限り一生そこで暮らすことになる。下北沢が地元ならではの、幼馴染や俳優志望の若者など、個性的な面々が集う。家族、友人、仕事関連の知人が公私にわたり交流することって案外ないよね。それが羨ましいような、鬱陶しいような読後感。下北沢は、私にとっては青春の街。いつかまた訪れてみたい。2020/03/15