出版社内容情報
宮部 みゆき[ミヤベ ミユキ]
著・文・その他
内容説明
三島屋の主人伊兵衛は、傷ついた姪の心を癒やすため、語り捨ての変わり百物語を始めた。悲しみを乗り越えたおちかが迎える新たな語り手は、なじみの貸本屋「瓢箪古堂」の若旦那勘一。彼が語ったのは、読む者の寿命を教える不思議な冊子と、それに翻弄された浪人の物語だった。勘一の話を引き金に、おちかは自身の運命を変える重大な決断を下すが…。怖いけれども癖になる。三島屋シリーズ第五弾にして、第一期の完結篇!
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年東京生まれ。東京都立墨田川高校卒業。法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞長編部門、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、93年『火車』で山本周五郎賞、97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、99年『理由』で直木賞、2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。02年司馬遼太郎賞と芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、07年『名もなき毒』で吉川英治文学賞、08年英訳版『BRAVE STORY』でBatchelder Awardを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
時代小説大好き本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
206
人の願いの毒とそれを食らうもののおぞましさ。幼くして逝った若君の魂との交流、悪しきものとそれを封じる人々、読んではいけない本を読んだ者の宿命、愛らしい猫に隠された切ない事情。相変わらず粒ぞろいの三島屋シリーズ。ですが今回は何と言ってもこれに尽きる。「おちかちゃん、おめでとう!」黒白の間で語って語り捨てられ聞いて聞き捨てられた、怪しきものたちと人々の物語は、多くの縁をつなぎ、凝っていたおちかの心をほぐし、自ら歩き始める力となりました。引き継いだ富次郎さんはどんな聞き手になるのか、どう変わるのか、楽しみです。2021/01/13
よむヨム@book
142
★★★★☆ 星4つ この本では、瓢箪古堂の若旦那勘一さんが語られる話が、心に残った。 この原本が、未来のことが書かれている予言本であれば、栫井様がこの仕事を断れば、娘の花枝ちゃんの将来の目処がつかず、悔やみながら死んだかもしれない。 受ければ、百両で借金の返済ができ、三年の間に娘の道筋を付けられるかも知れない。 また、予言本でなければ、この依頼が無く、仕官もできず、借金を返済できず、娘の幸せは見えない。 栫井様の気持ちを思うと読んでいてすごく切ない気持ちになり、この結末が幸せなのだろうと思う。2022/01/26
タツ フカガワ
142
中編5話のシリーズ5作目。好きなのは、“もんも(化け物)声”をもって生まれた女性が語る数奇な半生の「だんまり姫」。一国様が「暗獣」のくろすけと重なる心温まる一編でした。また文庫カバーでおちかが花嫁姿に。そうなるきっかけの一つが、表題作で語られる不気味な本の話で、以後は富次郎が黒白の間の聞き役になるのかしらん。次作が気になります。2020/08/18
酔拳
131
辛く悲しい想いをした、おちかが、おじさんの家に住まわせてもらって、おじさんの粋狂で怖い話がある人を招いて、三島屋で語ってもらおう、そして、聞き役をおちかがすればいい、ということになり、四の続まで、22話が語られてきました。本作でも、あやかしの話が5話語られます。今回も怖い話が揃っていて怖かったです。そして、おちかが、本作中で、結婚が決まり、嫁に行くことになってしまいました。どうなるかと思いきや、一緒に聞き役をしていた、いとこの富次郎があとを継ぐそうです。あと99話まで、まだまだあるので、後が楽しみです。2022/03/04
ふう
111
聞き手が二人になり、「聞き捨て」に「絵」が加わって、おちかの胸に重く沈んでいた悲しみが少しずつ和らいできたようです。その結果が表紙の幸せな姿。でも、幸せになろうと決心させたものの中に、百物語で聞いたあやかしの結末を見届けたいという気持ちがあったことが、いかにも百物語という感じですね。もんも声でも痘痕でも、心根さえまっすぐなら人は幸せに生きていけます。人を恨んだり憎んだりすることは、何より自分の心を傷つけるのだと、どの語りも教えてくれます。それでも世の中は魑魅魍魎。次のシリーズで富次郎は何に出会うのでしょう2020/07/24