黄金列車

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 46判/ページ数 336p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784041086315
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

ハンガリー王国大蔵省の役人のバログは、敵軍迫る首都から国有財産の退避を命じられ、政府がユダヤ人から没収した財産を積んだ「黄金列車」の運行にかかわることになる。バログは財宝を狙う有象無象を相手に、文官の論理と交渉術を持って渡り合っていくが、一方で、ユダヤ人の財産である物品は彼を過去の思い出へといざなう。かつて友誼を結んだユダヤ人の友人たち、妻との出会い、輝くような青春の思い出と、徐々に迫ってくる戦争の影――。ヨーロッパを疾駆する機関車のなか、現在と過去を行き来しながらバログはある決意を固める。実在した「黄金列車」の詳細な資料を元に物語を飛翔させる、佐藤亜紀の新たな代表作!

内容説明

第二次世界大戦末期。ハンガリー大蔵省の役人のバログは、敵軍迫る首都から国有財産の退避を命じられ、ユダヤ人の没収財産を積んだ「黄金列車」の運行に携わることになる。混乱に乗じて財宝を狙う有象無象を相手に、文官の論理と交渉術で渡り合っていくバログ。過酷な日々の中、胸に去来するのはかつて青春を共にしたユダヤ人の友人、そして妻との出会いだった。輝くような思い出と、徐々に迫ってくる戦争の影。ヨーロッパを疾駆する列車のなか、現在と過去を行き来しながらバログはある決意を固める―。

著者等紹介

佐藤亜紀[サトウアキ]
1962年、新潟県生まれ。91年『バルタザールの遍歴』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。2003年『天使』で芸術選奨新人賞を、08年『ミノタウロス』で吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こーた

271
上司のミンゴヴィッツは言う。「人間には三種類ある。馬鹿と、悪党と、馬鹿な悪党だ」。馬鹿な悪党に乗っ取られたこの世界で、わたしたちにできることは何か。それは仕事をすることではないか。ユダヤ人の没収財産を守り、運ぶ。非道い仕事だ。でも、誰かがやらないといけない。ひとつひとつは小さくとも、みながていねいな仕事をしていれば、世のなかはきっと善くなる。各人が責任と矜持をもって行動する。行動が人間を形造る。小説とはそういうものだ。おとなの娯楽というべきであろう。馬鹿な悪党に仕える不幸な官僚こそ読むべき小説ではないか。2020/03/03

紅はこべ

138
佐藤亜紀さんの読者は西洋史全般の知識を持っていることを要求されるな。文官だから、引き渡すには書類を整えて、責任者名も明記してと要求する。日本の現政権、前政権の官僚や政治家どもに爪の垢を煎じて飲ませたいね。ユダヤ人の没収財産を運んでいることについてはバログ以外は罪悪感とかなさそうだけど。クレックナーが従来抱いていたSSのイメージとだいぶ違っていた。2020/10/06

ちゃちゃ

126
それは“黄金”列車なのだろうか。第二次世界大戦末期、ユダヤ人から没収した財宝を国有財産として積載した、ブタペシュト発の列車。史実に基づいたフィクションだが、作者の硬質な筆は説明をきらい、事実の描写に徹する。カットを多用した映画のように、壮絶な現在と無残に奪われた過去が交錯する。銀の燭台や切手帳の、心憎いまでの巧みな使い方。物語後半、封印されていた主人公バログの痛切な思いが像を結ぶ。苦難の末のラストで作者は一冊の切手帳に託して問うのだ、守り抜くべきかけがえの無いものとは“黄金”ではなかったのではないか、と。2020/05/16

のぶ

112
第二次世界大戦に関して書かれた文学は多いが、この本もその一面を描いた作品だった。大戦の末期、ハンガリー大蔵省の役人のバログは、敵軍迫る首都から国有財産の退避を命じられ、政府がユダヤ人から没収した財産を積んだ「黄金列車」と呼ばれる列車に携わることになる。ストーリーの流れは没収資産を列車に乗せて運搬する話。その中にかつてバログが親交を結んだユダヤ人の友人たちの思い出が挿入される。暗く重い雰囲気が漂う中、バログの行なった行為が胸に迫ってくる。戦争文学の名作と呼んでもいい一冊だと思う。2019/11/26

buchipanda3

105
第二次世界大戦の歴史の影の一片を切り取って描かれた長編小説。戦争という非常な事態の渦中にいる者たちが見せる人間の機微に通じた味わい深いドラマをじわじわじっくりと堪能した。劇的な展開があるわけではなく、正義を振りかざすわけではなく、ただそこに生きている人間として、バログたち役人のおっさんらが見せる意地、ささやかだが気の入った反抗を果たす姿が痛快であり、痺れた。その裏には非道な使命に従う役人の悲哀、その荷物の重み、悔しさ憤りが密かに充満している。それらが一文一文から滲み出てくるのを感じた。表紙も渋くていい。2019/11/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/14436909
  • ご注意事項

最近チェックした商品