内容説明
すれ違う登山者に挨拶するたび、返ってくる奇妙な反応に不安を覚えた矢先、ある男の指摘に戦慄する「命の影」。友人と歩く山道で見かける人影の異様さに気づいた瞬間、恐怖に襲われる「ついてくる女」。気さくな女将が饒舌に語る息子の様子と、滞在中姿を見なかった少年からの葉書に震撼する「ぼくちゃん」など16篇。先の見えぬ濃霧、藪に隠れた谷、雪山の足跡―死と隣り合わせの山の怪異を畏怖とともに描く、山岳怪談の決定版。
著者等紹介
安曇潤平[アズミジュンペイ]
1958年、東京都生まれ。山登りと酒と煙草を愛する。99年、くも膜下出血を発症するも奇跡的に回復する。その後、ホームページにて怪談作品を発表。山の怪談の第一人者として、活動の場を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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大阪魂
43
「山」で「霊異記」ってタイトルに美味しそーやん!っておもて読んだらシリーズもんやったんやね!すっ飛ばしてしもててこれシリーズ第4弾!16編の短編集!一つ一つが短いからサクッと読めるんやけど、怖いもんがついてくる系のゾワゾワする話もあれば、オチがよーわからんくて何やこれ?ってのも!どれもいろんな山の話載ってるからまた山登りいきたなった!伊豆半島とか鎌倉とかの山、そんな高ないけど険しいし、富士山もよーみえるし楽しそう!怖かったのは「ついてくる女」「ぼくちゃん」「推定古道」「秘湯の夜」かなあ、シリーズ他のも読も2023/03/09
かおりんご
30
山のホラーといえば、安曇さん。今回も堪能させて頂きました。「ぼくちゃん」が一番怖かったです。ヒトコワ要素が高いけど。もう一人で山登りはできませぬ。2021/06/12
稲花
19
山は怪異の起きやすい場所、興味があるのでいつか是非読みたいと思っていた。山は昔から信仰の対象になっているだけに、何処か不思議な感覚がある。霊的なのか、山の雰囲気がそう思わせるのか、16編の中にはゾクっとする話もあれば、何処か懐かしく温かい気持ちになる話もあった。人は文明の利器に頼れなくなると、不安になり怪異を感じるらしい。心霊本のようで、昔は山やそれに添う自然と近くで生きていた時代の人々の、忘れてしまった感覚を思い出させてもらえる話しのようでした。花が沢山出てくるので、是非検索しながら読んでほしいです。 2019/12/02
スーヌ
14
【A-】気軽に読み始めたけど期待以上だった。基本的には山を舞台にした怪談なんだけど…面白いのが、山の話についてもしっかり書きこまれてるトコ。ホラー6、山4ぐらいのウエイトで。それが何とも絶妙な…心地よいブレンド。コテコテのB級ホラーを豚骨ラーメンとするなら、こちらはあっさり味の醤油ラーメン。サラっとイケる。読後感も良い。ちなみに他の方も書かれてるけど「ぼくちゃん」はめちゃめちゃ怖い。現実にありそうで鳥肌立った(苦笑)2022/07/08
山田
14
登山の途中に濃い霧がたちこめ、急激な気温の低下に歯の根も合わず…オバケが「バァ」!と出る話は全くないです。 なんとなく落ち着かないような、「ん〜?」と首を傾げたくなる不思議な奇妙な感じが一話一話読んだ後に襲ってくる。 「正体不明なものは正体不明のままで」という一文が全てを物語っていると思う。 怖い話ばかりが「怪談」ではないし、静かな奇妙さの漂う話も「怪談」なのだと、しみじみ考えてしまった。2021/01/02