出版社内容情報
小さな謎は、大切なことへの道しるべ――ミステリの巨人が贈る極上の謎解き
内容説明
小さな謎は大切なことへの道しるべ。解いてみると一筋縄ではいかない人の心が照らし出される。学生時代に届いた想い出の葉書には、姉のように慕っていた先輩が遺した謎めいたアルファベットの羅列があった。数十年の時を経て読み解かれたとき、現れたものとは―。表題作のほか、宇宙人たちが日本の名著を読むユーモア作「解釈」、乱歩へのオマージュ「続・二銭銅貨」など、ミステリの名手が贈るバラエティに富んだ謎解き7篇。
著者等紹介
北村薫[キタムラカオル]
1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で第44回日本推理作家協会賞、2006年『ニッポン硬貨の謎』で第6回本格ミステリ大賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、16年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
213
何度も読み返したくなる爽快感。染みた葉書から漂ってくるコーヒーの薫り。今この場では直接言えなかったことも、数多の夜を越えて記された謎から見えてくる。同じ空の下で私たちは幾度も夢を追いかけては見失い、諦めかけては微かな希望を見つける。星の光も届かないほどに遠くなった夜空に浮かぶ無邪気な微笑み。難解な絡みほど解きたくなるものだが、一度でも濡れればより固く結ばれる。力一杯に解して仮に真実を知ることが出来たからといって、心までを平穏に向かわすとは限らない。そこに残るのは結局、複雑に絡み合った感情の余韻だけである。2023/06/28
へくとぱすかる
146
何と言っても「続・二銭銅貨」。ちょうど乱歩の『心理試験』の復刻本の冒頭、当の「二銭銅貨」を読んでいる最中だったので、驚きも数倍。「やってくれましたなぁ」という作品。「ビスケット」はオーソドックスなミステリ。巫弓彦という名前に記憶があったのに、思い出せない。「付記」を読んで疑問氷解。『冬のオペラ』の探偵役でしたか! もう一度読みたい。「解釈」は、昨日読んだかんべ先生が乗り移ったのではないか、と思ってしまった珍作。笑えます。北村作品の奥行きの広さがうかがえます。2019/12/08
ちょろこ
132
謎解きがもたらす余韻、の一冊。良かった。バラエティに富んだ謎解き七篇は第一話の「遠い唇」でいきなり珠玉の味わい。この小さな謎解き後の余韻、謎解きの爽快感がいきなりせつなさに姿を変えて心に残るこの余韻がたまらない。心のどこかがキュッとした、その瞬間をたしかに感じた。香りやもので呼び起こされるあの時。時を経て受け取るあの時のあの想い。こういう形で想いが大切な人の心に残る…これもまた幸せの一つなんじゃないかしら。そしてこの作品が自分の心にも忘れがたいものとして残る…うん、なんか今、すごく幸せ。2020/01/30
岡部敬史/おかべたかし
124
じつに北村薫先生らしい優しい味わい。落ち着きます。素敵です。学生時代の日々が、ちょっと自分の中で蘇ってきました。あの早稲田の学生街、また行ってみようかな。2021/01/28
がらくたどん
68
ご感想に惹かれて。初読は単行本。「和田さんの挿絵」が見たくて買い直し安心してそのまま書棚に寝かしていたのを再読。謎解き短編7作全てになにがしかの文学作品が関係しているのが北村薫っぽくて好きな作品集。学生時代の淡い思い出がコーヒーの香りを閉じ込めた暗号から蘇る表題作。亡夫が残した未完成の俳句メモから瑞々しい思いが伝わる「しりとり」漱石と太宰をネタにした文学的SFコメディー「解釈」に乱歩の作中の宿題にまさかの答えを出した「続・二銭銅貨」英字ビスケットからとんでもなく遠くまで連れて行かれる「ビスケット」等。2023/06/28
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