出版社内容情報
櫛木 理宇[クシキ リウ]
著・文・その他
内容説明
誰もが羨む、川沿いの瀟洒なマンション。専業主婦の菜緒は、育児に無関心な夫と、手のかかる息子に疲弊する日々。しかし209号室に住む葵という少年が一家に「寄生」し、日常は歪み始める。キャリアウーマンの亜沙子、結婚により高校生の義母となった千晶、チョコレート依存の和葉。女性たちの心の隙をつき、不幸に引きずり込む少年、「葵」。彼が真に望むものとは?恐怖と女の業、一縷の切なさが入り交じる、衝撃のサスペンス!
著者等紹介
櫛木理宇[クシキリウ]
1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
84
『209号室には知らない子供がいる』の文庫化(櫛木さん改題率高め?)。瀟洒なマンションで相次いで起こる奇妙な事件。アオイという少年は何者なのか。イヤミスの楽しさもあり、きちんとホラーで面白かった。驚きの真相ではないが、もやもや残らないのがいい。得体の知れない恐ろしさよりも、家庭内で孤立していく様子が怖かった。なによりイライラする人物の書き方が上手すぎるのがツボ。あの旦那、あの姑、あの妹!ムカつきすぎて笑ってしまう!感情移入するときついかもしれないので、傍観者として読むのがオススメ。2020/10/22
H!deking
83
誰もが羨む高層マンションにまつわる連作短編集ですね。導入からラストまでハラハラドキドキの一気読みでした。ホラーではあるんだけど人間関係のドロドロ感も描かれていてなかなか面白かったです。2023/08/17
つばめ
75
ひえ、子どもと赤子のホラーは何であっても怖すぎる…。どんな幽霊よりも何故か怖い…。無邪気で天真爛漫で悪意のない悪意。後半の展開が、最早別の物語に変わったかのようだけど、真相の種明かしとして見るとなるほど…。家族の綻び。女、母、子、父。忘れたくて封印したこと。羽美以外は巻き込まれた形だけど、葵がトリガーとなって壊れていく。子ども産んだりがより怖くなったなあ。2020/08/12
yukaring
71
人々の心の隙間に付け入る存在、ジワジワと歪んでいく日常に恐怖する衝撃のサスペンスホラー。川沿いの瀟洒なマンション「サンクレール」。誰もが羨むこの物件を跋扈する謎の少年・葵。彼はマンションに住む家族の間にするりと入り込み人々の心の底の孤独や妬み、本質を表に引きずり出す。子供のような夫とイヤイヤ期の子供に振り回される妻、少女のような姑に悩まされる嫁など人々の当たり前の日常は崩れ去り奈落の底へと突き落とされていく。ラストで描かれる葵の正体や土地に残る悲しい歴史には心が痛む。誰の側にも葵はいるのかもしれない。2023/01/28
えみ
57
あきらかな悪霊!無邪気で綺麗で可哀想…は人の関心を惹きやすい。とどめは子どもだという油断。怖い、知らないうちに何かが纏わりついて外堀から埋められていく感じが怖い。じゅくじゅくと傷が膿んで、じゅくじゅくと生活が侵蝕されて、死が迫ってくる。勝てる気がしない、追い出せる気がしない、その209号室のアオイに。瑕疵物件の怪。アオイに付け込まれるとやがて不幸が身に降りかかってくる。アオイはなぜ現れるのか?住民たちを恐怖に陥れるソレはなんなのか。心に鬱屈したものを抱え、問題ある人間を嗅ぎ分けてくる悪霊。目的がない恐怖。2023/11/11