内容説明
結婚詐欺容疑で介護士の円藤冬香が逮捕された。婚活サイトで彼女と知り合った複数の男性が相次いで死亡していたのだ。しかし冬香は容疑を否認。アリバイも完璧だった。美貌の冬香の身にいったい何があったのか。関心を抱いたフリーライターの今林由美が冬香の過去を追い北陸に向かうと、30年前に起きたある未成年事件にたどり着く。由美は、父親を刺した少女と冬香との関連を疑うが、証拠がなく暗礁に乗り上げてしまう…。
著者等紹介
柚月裕子[ユズキユウコ]
1968年、岩手県出身。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。18年『盤上の向日葵』で「2018年本屋大賞」2位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ノンケ女医長
221
父親は、妻との間に2人の娘をもうけた。夫婦に恋心があり、出産を喜んだと信じたい。実際はそうではなかった。出生届を出さず、酒浸りで娘に愛情を注ぐことはなかった。服従を強いた。鬼畜と言っていい。必死の思いで親元を離れ、妹との別離を悔いる早紀の苦しみは、本人にしか分からない。手を差し伸べようとする行政や、社会正義に基づいた信念なのか、出版物にしようとする周囲の存在に強い嫌悪感があった。タイトル「蟻の菜園」は、被虐待者の私にとって、全く理解できなった。さて、著者はどうやってベゲタミンAの存在を知ったのだろうか。2023/03/11
のり
194
結婚詐欺・殺人の容疑がかかった女に興味を抱いたフリージャーナリストが足跡を辿る。容疑者には完全なるアリバイがあったが、協力者の助言や引っ掛かりを元に解明の糸口を見つける。それは鬼畜の犠牲者達。あまりにも痛々しい。善意で行った事も悪意の下ではマイナスに傾く。児童養護施設も経過観察はしなかったのか?無戸籍児という扱いだけでも許される行為ではない。姉妹の絆は本物だが、それすら方向性を失った悲しすぎる事実。2020/04/12
mariya926
160
カドフェス2019にあったので読んでみました♪柚月裕子さんの本を読み終わると何かやり終えた気になるんですよね(笑)今回は結婚詐欺殺人事件で逮捕された美人の記事を書くためにライターの由美調べ始めます。最初はライターがここまで調べに来たら加害者や被害者の周りの人は本当に大変だなと思いつつ読んでいましたが、過去に触れ始めてからは一気読みでした。今の時代だったら戸籍法とかあるので難しかったはずのミステリーですが上手いです。読者にもバレないように上手いこと持っていくのがさすが柚月さんだと思います。2019/09/24
昼寝ねこ
144
児童虐待、性被害、無戸籍児、アルコール依存性、児童養護施設など、社会問題を色濃く反映した推理小説。扱われる事件は婚活詐欺による練炭殺人で、実際に起きた過去の犯罪を想起させるが、こちらはあくまでフィクション。事件に興味を持ったフリーライターが犯人と目される人物の過去に迫っていく。そしてその調査の過程で不幸な生い立ちを背負った姉妹の存在が浮き上がってくる。徐々に明かされていく謎の解明と後半の驚愕の展開は推理小説として大変面白いが、マスコミの取材のあり方には疑問を感じた。2025/03/30
ふじさん
133
代表作「盤上の向日葵」同様に、松本清張の「砂の器」へのオマージュが濃い作品。首都圏連続不審死事件を題材にした作品だが、さすが柚月は、単なるゴシップ事件では終わらせない。フリーライターの由美は、円藤が起こした事件に興味を覚え、取材を始める。円藤の過去を追う中で、30年前に起きた失踪事件に辿り着く。過去と現在の事実が交互に描かれ、真相が少しずつ明らかになった行く。そこには、姉妹の筆舌に尽くし難い人生がある。読み手を最後まで引き付けて離さない面白さと思いもよらない展開もあり、さすが柚月裕子だと思わせる作品。 2022/06/07