出版社内容情報
移りゆく時代にあっても、変わらないものとは──。
将軍に献上される御茶を、毎年初夏に宇治から江戸へ運ぶ行列──御茶壷道中。その行列を見るのを楽しみにしている宇治出身の仁吉は、日本橋の葉茶屋・森山園の奉公人だ。
安政六年の今年も、間もなくその行列がやってこようとしていた。仁吉は十五歳になり大旦那太兵衛のもと元服を無事を終え「仁太郎」の名を与えられたが、孫娘で内儀のお徳は、なにかと彼に厳しくあたるのだった。そんな矢先、彼は、太兵衛に連れられて、旗本の阿部正外の屋敷を訪ねることになる──。阿部との出逢いが、日本一の葉茶屋を目指す仁太郎の人生を、大きく変えようとしていた。
内容説明
御茶壺道中にあこがれ、葉茶屋の奉公人となった仁吉。お茶を愛する商人の、一途な想いは、だれに届くのか。お茶が映し出す江戸と、幕末の変遷を描いた長篇小説。
著者等紹介
梶よう子[カジヨウコ]
東京都生まれ。フリーランスライターのかたわら小説執筆を開始し、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞を受賞。08年『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、同作で単行本デビューを果たす。以後、時代小説の旗手として、16年『ヨイ豊』で直木賞候補となり、同作で第5回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
219
『北斎まんだら』『ヨイ豊』の梶よう子の新作だから大いに期待して読んだが、ちょっと物足りなかった。もっと「お茶壷道中」そのものが、読みたかった。建仁寺に始まり、江戸の将軍に献上される「道中」 そのものが知りたかった。黒船来航前後から、幕末の「時代」(主人公が「生麦事件」の目撃者になったり、「寺田屋」のお龍と会ったり)は描かれているが、匂い立つようなお茶の世界が、もっともっと欲しかった。2019/09/10
初美マリン
115
幕末を背景に宇治のお茶をこよなく愛する主人公、真面目で一生懸命で優しい、必ずや幸せになってと望む通りになってめでたしめでたし! 2019/06/07
のぶ
92
幕末を舞台に、お茶の商いに打ち込んだ男の生き方を描いた時代小説。主人公は幼名、仁吉、元服して仁太郎と名乗る葉茶屋の奉公人。お茶壺道中とは、将軍に献上される御茶を、宇治から江戸へ運ぶ行列で大名行列より権威があったらしい。そんな説明が序盤にあり、その後、仁太郎は旗本の阿部正外の屋敷を訪ねた。それを機会に一流の葉茶屋を目指すことになる。激動の時代の変化を背景に、当時のお茶というものの扱いが丁寧に表現されていて、同時に仁太郎のお茶に対しての入れ込みがしっかりと描かれていた、親しみやすい時代小説だった。2019/03/24
ゆみねこ
72
江戸時代の末期宇治の茶葉農家に生まれた仁吉が、江戸の葉茶屋・森山園に奉公し、成長をしていく物語。幕末の混乱と世相をからめ面白く読了。2019/04/07
真理そら
64
宇治茶というなんとなく地味なものを扱って、葉茶屋の奉公人仁吉のある意味順調な人生を描いているのに、なぜかグッと引き込まれて読み終えた。そして丁寧に淹れた煎茶を飲んだ。綾鷹でとても有名になった上林春松商店の生き残り方も興味深かった。寺田屋のお龍がいるのは時代をいっそう分かりやすくするためだろうか。2019/06/15
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