内容説明
時は幕末。西洋式兵術の導入を進めていた秋月藩執政・臼井亘理は、ある夜、尊攘派により妻もろとも斬殺された。だが藩の裁きは臼井家に対し徹底して冷酷なものだった。息子の六郎は復讐を固く誓うが、“仇討禁止令”の発布により、武士の世では美風とされた仇討ちが禁じられてしまう。生き方に迷い上京した六郎は、剣客・山岡鉄舟に弟子入りするが―。時代にあらがい、信念を貫いた“最後の武士”の生き様が胸に迫る歴史長篇。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞。16年『鬼神の如く黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
53
史実をもとにしているのですね。時代に争う最後の武士が胸に刺さります。生き方に迷い、時代に争う覚悟を持った六郎の生き様と信念に引き込まれました。2022/03/13
紫陽花
39
たまたま図書館で手に取った本です。主人公は、日本史上最後の仇討ちをしたとされる九州秋月藩の、臼井六郎。歴史の本はよく読むのですが、恥ずかしながら知りませんでした。かなりの有名人で、色んな作品に取り上げられているのですね。明治維新という荒波に翻弄されながら、信念を貫く。「青空を眺めろ」時に曇り、雷雨ともなるが、いずれ青空が戻ってくる…。良い言葉ですね。私も悩んだときは、青空を眺めるようにします。2022/12/31
あまね
22
葉室麟さんの『秋月藩』シリーズだと知り、手に取りました。あとがきを読んで『最後の仇討ち』は事実だったことにとても驚きました。維新前後を経験した人たちは、維新前の常識や美徳が維新後は紙クズのようなものになる経験をしたのだということを改めて感じました。正直に勤勉に藩のために尽くしたにもかかわらず妬まれ惨殺された亘理の無念さと仕組みが変わったために親の仇が打てない六郎の思いは苦しく、華々しく描かれることの多い明治維新というものを考えました。司馬史観だけが歴史ではないことを葉室さんの本ではいつも思います。2018/11/01
ましゅう
20
秋月藩、臼井六郎。最後の仇討ち。討った後の…。同じことをしても、時代が変われば捉えられ方も変わってしまうけれど、時勢に流されて媚びを売ることなくブレずに自分らしく生きるようにしたいものです。2018/11/23
ちゃま坊
17
吉村昭「最後の仇討ち」との読み比べ。同じ題材だがこちらのほうが詳しい。黒船来航から日露戦争後までの時代の親子二代の物語。主人公に討たれる仇は卑劣な極悪人として描かれている。山岡鉄舟や勝海舟など著名人も活躍するのでドラマとしては面白い。しかし吉村作品よりも創作が多いように感じた。組織の行なった殺人の場合、仇は複数いるのだが一人ではここまでか。一気読み。★★ 2019/01/22
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