出版社内容情報
江戸川 乱歩[エドガワ ランポ]
著・文・その他
内容説明
探偵作家の寒川に、資産家夫人、静子が助けを求めてきた。捨てた男から脅迫状が届いたというが、差出人は人気探偵作家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味で、寒川は出来るだけの助力を約束するが、春泥の行方はつかめない。そんなある日、静子の夫の変死体が発見された。表題作のほか、愛する女に異常な執着を示す男の物語、「蟲」を収録。男女の情念を描いたベストセレクション第4弾。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、「D坂の殺人事件」「心理試験」「孤島の鬼」などの探偵小説を次々発表。「人間椅子」「押絵と旅する男」「鏡地獄」「芋虫」「陰獣」「屋根裏の散歩者」「黒蜥蜴」など、怪奇小説、幻想小説にも優れた作品が多い。代表的なシリーズに、「怪人二十面相」「少年探偵団」などがある。日本の小説界に多大なる業績を残す。65年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
117
表題作について。タイトルからしてヤバイ感しかしないwww。なんと、変態、いやいや性的倒錯者を軸に[「偶然」、「バイアス」、「邪推」、「妄想(≒考察)」が一定のサイクルを回す凄さに最後の最後まで一時も目が離せませんでした。2023/02/03
藤月はな(灯れ松明の火)
99
突然、この物語での"「サア、ぶって!ぶって!」と叫びながら上半身を波のようにうねらせるのであった"という一文が脳内をよぎった事がきっかけで再読。江戸川乱歩の作品に出てくる男って大抵、自己意識が異常に高い癖の偽善者で真実に対すると途端に避けようとする人でなしが多いですよね…。大人になった今では何故、そんな事をしてしまったのかが理解できて不思議といじらしさすら感じてしまいます。それなのに自分が可愛いだけの莫迦男は…(−_−#)そして大江春泥の性格や癖、大山田氏の風貌の描写がまんま、乱歩先生なので思わず、ニヤリ2016/08/02
忠犬じろレポ
96
今回の2作も期待通りの作品。陰獣のラストはさすが乱歩。蟲も殺人犯の心の陰と獣、自己中でその場その場的な行動が、哀れにさえ感じました。両作品ともあまりイヤミス感はなかった・・・ただただ切ない。著者が江戸川乱歩だったからかな?2015/02/18
優希
87
面白かったです。ドロドロしていますし、エログロという言葉が似合います。陰獣というより淫獣という方がしっくりくるかもしれません。主人公の狂い方や愛し方は怪奇趣味が好きな人には何とも言えないものがあるように思いました。怪奇小説の古典でありながら色褪せない魅力があります。背徳的で濃厚な作品でした。2015/11/22
あも
83
陰獣/蟲。中編2本。セルフパロディーも盛り込まれた陰獣の素晴らしさよ。乱歩自身をモチーフとした作家・大江春泥に脅迫された美貌の婦人から相談を受けた寒川。論理の限界と懊悩、フェティッシュな描写の数々に粘着質な泥土に素足を突っ込んだ様な不快さが転じた快感を覚えた。当時は非難されたらしい敢えて多重解釈としたオチもこれしかないと思える。蟲もまた別の陰獣の話。この2編で1冊を構成した角川は正しい。乱歩の窃視趣味、変身願望が名推理小説として昇華した傑作。余談だがサディストを惨虐色情者と表現すると凄く情緒があって素敵。2017/12/20