出版社内容情報
江戸川 乱歩[エドガワ ランポ]
著・文・その他
内容説明
時子の夫は、奇跡的に命が助かった元軍人。両手両足を失い、聞くことも話すこともできず、風呂敷包みから傷痕だらけの顔だけ出したようないでたちだ。外では献身的な妻を演じながら、時子は夫を“無力な生きもの”として扱い、弄んでいた。ある夜、夫を見ているうちに、時子は秘めた暗い感情を爆発させ…。表題作「芋虫」ほか、怪奇趣味と芸術性を極限まで追求したベストセレクション第2弾。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、「D坂の殺人事件」「心理試験」「孤島の鬼」などの探偵小説を次々発表。代表的なシリーズに、「怪人二十面相」「少年探偵団」などがある。日本の小説界に多大なる業績を残す。65年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
137
狂った美しさがありました。怪奇と幻想の世界が広がり、世の中から逸脱しているような人たちが闇の中で笑っているような雰囲気を感じます。グロテスクと言えば簡単なのですが、それ以上の何かが詰まっているから、毒の甘さを味わうだと思います。表題作『芋虫』は何度も読んでいますが、読むたびに好きだなと思わされる作品です。2016/10/19
りゅう☆
111
胴体をうねらせ動く『芋虫』にゾゾッ、『指』だけが動くなんて怪奇で、森を彷徨い血糊の『火星の運河』に辿り着く怖さあり、愛しすぎて妻を殺した夫の執念が恐ろしい『白昼夢』、離しては喰いつき楽しげに『踊る一寸法師』は不気味で、無駄になった『夢遊病者の死』がなんとも可哀想で、『双生児』が故のトリックと悲しい現実が切なく、罰せられない殺人を繰り返すT氏が『赤い部屋』で話したのは夢か現か…、『人でなしの恋』をした夫が愛したのはまさかの…断末魔の不気味な笑いって聞きたくないな。短編集なのでサラッと読めるけどゾワッとくる。2018/08/31
あも
108
「芋虫」は勿論既読だが、それでもこの閉ざされたグロテスクな美に圧倒される。「赤い部屋」や「指」の気持ち良いまでの話の転がし方。「踊る一寸法師」の狂乱。「夢遊病者の死」の滑稽さと諧謔。改めて読んでみても100年近く前に書かれたとは思えない色褪せなさに驚きを禁じ得ない。小説のみならず多くの表現に今もなお直接的・間接的に影響し続ける理由。そして後進が乱歩に近付き超えることのいかに困難であるかも。余談だが、田島昭宇の退廃的で美しい装画に惹かれてこつこつと地道に集めたシリーズなので、書影が現行版なのがちょっと残念。2019/08/31
かみぶくろ
99
人間のどこをどう切って捻ってすり潰せば美しさエキスが滲み出てくるかを試し続けた乱歩。2016/02/28
里愛乍
68
前作『人間椅子』の時は気付かなかったのだけど、本書掲載の『指』で突然絵が浮かんだ。自分の脳内で高橋葉介の漫画絵にそっくり変換されて読んでいたのだ。独特のタッチというか湿った感、おぞましくもぬめりを感じる気持ち悪さかつ目を瞠るような妖艶さ。デジタルでは絶対表せない墨汁を使って筆で描いたようなそんな画像が浮かびました。特に『芋虫』のエロさと『双生児』エゲツなさがお気に入りです。2016/06/24
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- 和書
- 死に損ないの獣たちへ