出版社内容情報
あいつは私をつけ狙っている。芥川賞作家によるダークで風変わりな短篇集。私のストーカーは、いつも言いたいことを言って電話を切る(「去勢」)。リサは、連続殺人鬼に襲われ生き残るというイメージから離れられなくなる(「ファイナルガール」)。戦慄の7作を収録した短篇集。
藤野 可織[フジノ カオリ]
1980年、京都府生まれ。2006年、「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞。12年、『パトロネ』で野間文芸新人賞候補。13年『爪と目』で第149回芥川龍之介賞。『おはなしして子ちゃん』
内容説明
どこで見初められたのか、私にはストーカーがついている。もう何年も。そして私の結婚が決まったあとも、携帯に電話をかけてくる(「去勢」)。狼が訪ねてきたのは俺が五歳の時だった。その記憶が、俺の生涯を変えた(「狼」)。リサの母は、リサを守って連続殺人鬼とともに死んだ。その日から、リサの戦いが始まった(「ファイナルガール」)。日常に取り憑いて離れない不気味な影。歪んだ愛と捩れた快楽、読む者に迫りくる7つの短篇集。
著者等紹介
藤野可織[フジノカオリ]
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で第103回文學界新人賞。13年「爪と目」で第149回芥川龍之介賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
95
うわ、怖いな…。気持ち悪い。藤野さんの不気味な部分がジクジクと行間から漏れ出してくるような良短編集。たとえるなら、宇宙人が人間社会のことをじっくり観察して執筆した小説。確かに行動パターンは人類のものなのに、タチの悪いことに一人称で描いちゃうから、地の文の心理描写がどこかずれてて怖い。単純に面白み・おかしみのある話や、良い発想だなぁと感心する短編も確かにあるのだが、どれも変な形の異形の陰が見え隠れするような気がして、不穏な心持ちになってしまう。村田沙耶香が自覚有の異星人だとしたら、藤野可織は無自覚の異星人。2019/07/30
ケンイチミズバ
69
屋上は高いところにあるものだ。しかし都会ではビルの高さ次第でより高いビルに囲まれ見下ろされることもある。屋上に閉じ込められ寒さと向かいのビルのバレエ教室の明かりに見下ろされながら失禁してしまう女性に感覚がシンクロしてしまった。狼のシュールさは秀逸。か弱い彼女がこの日のために肉体を鍛え上げた武志をよそに家具のポールで狼をなんなく撲殺したラストと5才で語り口が俺という違和感も上手いと思った。自分も中学の頃、発音しない黙字をわざと発音してふざけたしプファインベルガーはドイツ系でファインベルクなのだろう。2017/02/28
いたろう
58
短編7編。不思議で風変わりで、大きな虚構によって成り立っている話が、当たり前の日常のように描かれていて、こんなこと、驚くような話ではないと思わせる。純文学というには虚構が過ぎるように思われ、エンタメというには読者に迎合しない、独特の世界。巻末解説が村田沙耶香さんというのも、同じく芥川賞作家、似たような不思議ちゃん(!)で共鳴するものを感じる。その解説で、藤野さんの創作だと思っていたものが、実在のもののように書かれていて、危うくそうなのかと信じてしまうところだった。解説まで。二人の絶妙のコンビネーションか。2018/03/31
アマニョッキ
52
最近やっとかじりはじめた藤野可織さん。やだもうなにこれめちゃくちゃ面白い。最初は先日読んだ「おはなしして子ちゃん」の方が好きかなーなんて思っていたけれど、「戦争」を読んだ瞬間に世界が一変。わたしのこれまでの読書記憶のどこにもない感覚におののく。うまく言えないけれど、ナンカコー藤野可織さんが自分にのりうつってきたような脳内映像の鮮明さ。解説で村田沙耶香さんが言っていた「それ、知ってる」っていう表現が一番近いかも。とにかくびっくりという言葉しか出てこない。藤野可織さん…もう大好きです。次は何読もう。2020/04/23
ピロ麻呂
38
芥川賞受賞作「爪と目」もよく理解できず、この作品も理解できず…自分の読解力の無さなのか?ごめんなさい。僕には合いませんでした(>_<)2017/02/09