出版社内容情報
平和を愛するトロイの王子・エクトールはギリシャとの戦争を回避できるのか。ギリシャ神話を題材に戦争の危機を訴える不朽の名作。
内容説明
永年にわたる戦争が終わり、ようやく平和が訪れたトロイの国。しかし王の息子パリスがギリシャ王妃エレーヌを誘拐したことで、トロイは再び戦争の危機を迎える。度重なる戦争に虚しさを感じていたトロイの王子エクトールは、平和を守るため和解の道を模索するが…。第二次世界大戦前夜のヨーロッパと、ギリシャ神話の世界を重ねて描いた「トロイ戦争の前日譚」。フランスを代表する劇作家ジロドゥの名作を新訳で贈る。
著者等紹介
ジロドゥ,ジャン[ジロドゥ,ジャン] [Giraudoux,Jean]
劇作家、小説家。1882年フランス・ベラック生まれ。高等師範学校を卒業後、外務省に入省。外交官として世界各地を旅しながら創作活動を行った。1928年、はじめて手がけた戯曲『ジークフリート』で大きな成功をおさめ、以降毎年のように新作戯曲を発表。ウィットとユーモアに富み、暗喩と詩的な表現がちりばめられた、反リアリズム的な作風で知られている。1944年、ナチ占領下のパリで急逝
岩切正一郎[イワキリショウイチロウ]
1959年生、国際基督教大学(ICU)教授(フランス文学)、戯曲翻訳家。第15回湯浅芳子賞(翻訳・脚色部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
28
征服者のギリシャ側から書かれたイーリアスと違って、侵略されたトロイ側の、奪われた声の復元が、この戦争に新たな視点を与える。戦争は起るというカッサンドラ、もうこりごりだというヘクトル、アウェイなのになぜか余裕のヘレネらの悲喜劇的な応酬のうちに、いつの間にか戦争の機運が高まる中でのヘクトルとオデュッセウスの紳士的な首脳会談で、最悪が回避されるかと思いきや、急転直下の偶然と誤解から火ぶたが切られる終盤が、戦争というものの愚かさをまざまざと照らし出す。詩人は殺され、言葉は奪われ、もはやギリシャ人の声しか聞こえない2024/04/07
けいこ
14
ギリシア叙事詩『イリアス』のトロイとギリシャの開戦直前の一日を描いた作品。作者のジロドゥは戦争を体験しているらしく、自分の息子を兵士にしないようにわざと不具にするという話などが出てきてゾッとしました。会話は冗長で、内容が少し難しく感じました。2017/10/24
H2A
13
観劇前に予習。有名な史劇だが、イメージされがちな難解さはない。凱旋した英雄エクトルは戦争に倦んで戦争の門を閉ざそうとするが、ギリシャとの戦争の発端を作ったパリスはじめトロイの人々はエクトルの意図を一向に解さない。敵の智将オデュッセウスとの対話で希望が垣間見えた直後に一気に暗転。戦争の門が開く。ただ読んでいるだけでも十分におもしろい。2017/10/21
fseigojp
8
さきにクリスタ・ヴォルフのカッサンドラを読んでおいてよかった 反ナチスのフランス演劇人2024/10/12
刳森伸一
5
トロイ戦争前夜を描く反戦戯曲。シビアな内容ではあるが、アナクロニズムを駆使したり、デウス・エクス・マキナのパロディを入れたりなど笑ってしまうところもあり、意外だった。2017/12/30
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