出版社内容情報
医療と社会の未来をブラックな笑いで描く、短篇集!法に護られた高齢者と、死にものぐるいで働く若年層に分断された社会。若者は圧倒的な劣勢で。(「占領」)「働かないヤツは人間の屑!」と主張する愛国一心の会が躍進した社会で、病人は。(「人間の屑」)七編。
久坂部 羊[クサカベ ヨウ]
大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー。小説に、『破裂』『無痛』『悪意』『芥川症』『いつか、あなたも』、エッセイに『大学病院のウラは墓場』『日本人の死に時』など、医療分野を中心に執筆。
内容説明
医療の近未来を描く、キケンな短篇小説集!
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー。医療分野を中心に執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
176
「現代社会が背負う深刻な問題の、行き着くところはこうだ」と脅されているような、シニカル過ぎて笑えない7編の近未来物語。超超高齢化社会で高齢者を支える現役世代の苦悩、出生前診断によって選別される命、メンタルが弱い人間や、詐病を働く人間を排除するための極端な政策、骨髄バンク登録の現実など、そんな馬鹿なと言い切れない痛烈な風刺のオンパレード。今後世の中はどうなっていくのだろう…と暗澹とした思いになる。マイベストは、体外受精という深刻で神聖な問題に、こんな仰天のオチを持ってくる発想に絶句させられた「のぞき穴」。2016/12/15
いつでも母さん
170
久坂部さんのは気を付けないと取り込まれたりするからね。今作はぎゅぎゅーっと皮肉たっぷりの短編7作。ご本人が医師であるのだから、そっち系の描写はお見事です。『占領』にはうすら寒さを覚えた。これからの若者よ、本当に考えなさいよ。と私も言いたい。サクサク読んだが読了後のなんとも漂うどんより・ざわざわ感は久坂部さんの術中に嵌まったようだ。装画と云いタイトルと云い、良い意味で裏切ってくれますよね~!2016/10/01
takaC
163
こういうこと本当にありそうだ。コワイコワイ。2017/03/31
ケンイチミズバ
161
言ってることに一理はあるものの、あまりに過激でしかも作品そのもののストーリーではなく、作中に登場するDVD の中のストーリーとして過激さの一部には逃げがあったりもします。ナチスの優生選別にも触れてうつ病で仕事から逃げるものをクズ扱いしたり、出生前検査で胎児に遺伝的な異常があることがわかり、動揺する母親に堕胎は殺人と同じだと脅す医師がいたり、なかなかムカツク作品です。現実にあり得る過激なものの考え方でもあり、こんな窮屈な世の中にしてはいけないというメッセージととらえました。2016/10/04
ノンケ女医長
146
著者は、医師。展開される短編集は、決して誇張ではないし、実際に起きうると私は思う。最も引き込まれたのは、「のぞき穴」。成長し、少年は勉強して医師になった。不妊診療を真摯に続け、一線を越えてしまった心理描写が実に生々しい。666組の夫婦に希望を託し、42歳でモルヒネとともに命を閉じていく産婦人科医の卑劣さは、どうして生まれたのか。少年の頃、母親と訪れた夏の海水浴場。もし別のトイレを利用していたら、違う運命になっていたのだろうか。顕微鏡で、自分の精子を観察しなければよかったのだろうか。実に、示唆に富む作品。2023/04/28
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