内容説明
39歳の開業医・川辺。妻は勤務医。一見満ち足りているが、その内面には浮気する妻への嫉妬と研究者や勤務医へのコンプレックスが充満し、水曜の夜ごと昏睡レイプを繰り返している。一方、被害者女性たちは二次被害への恐怖から口を閉ざしていたがネットを通じて奇跡的に繋がり合い、川辺に迫っていく―。底なしの邪心の蠢きと破壊された女性たちの痛みと闘いを描く衝撃作。文庫オリジナルのエピローグを収録。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年金沢生まれ。99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、10年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、11年同作で読売文学賞。04年、英訳版『OUT』で日本人初のエドガー賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケンイチミズバ
129
人間の厭らしさがそつなく巧くまとまっている。自信のなさを隠すためのブランド品、嫉妬や怒り妬みのはけ口を弱者に向ける、小心者なのに非道なことをしてしまう、ゲスな噂で盛り上る、カッコいい自分に酔いしれる、幼稚な思考、ほぼ性欲と物欲と食欲に支配され生きている。全てこれ人の所業の一部なり。物語ではそれが人から尊敬される医者なのだ。ネットによって犯人の共通の手口を知った被害者たちが繋がる。復讐へと向かうがどうなる。借金で火だるま経営の病院、何も知らず安穏と暮らす院長夫人、またぞろ現る霊媒師。桐野さんは容赦がない。2018/02/06
りゅう☆
96
妻の浮気に悩む開業医川辺。妻のいない水曜日の夜、彼は若い女性の家に忍び込み意識を失わせレイプを繰り返す。医者としてだけでなく、人間としての風上にも置けない酷いヤツ!泣き寝入りしつつあった女性たちが少しずつ繋がってくる。患者に対する態度がよくないのに、開業医の自由とお金を求め続け、他人の黒い部分が露わになるにつれ喜びを見出す川辺の歪んだ性格に不快感募る。女性スタッフの嫉妬や妬みも、妻としての責任も、ピーフラ会のこれからも色々なことが中途半端に終わったような気がしてモヤモヤ感が残り消化不良気味かな。2016/04/09
ま~くん
91
浮気する妻への嫉妬心から、水曜日の夜に薬物注射で女性の意識を失わせ乱暴を繰り返す39歳の開業医川辺。その被害者達がひょんなことから知り合い、犯人を追い詰めていく。分かるはずがないと高を括る川辺。しかし、被害女性達の執念が少しずつ川辺を追い込んでいく。推理モノでも、サスペンスものでもない。山場もなければ、読後の高揚感もない。著者が言いたいことは何だったのか。この手の犯罪を犯すクソ野郎の身が破滅するのは当たり前。自業自得。一生刑務所に入ってろと思う。ただこの犯人の妻の責任が何も問われないのは釈然としなかった。2021/06/20
まさきち
85
桐野さんの独特の妙味が感じられず、また登場する人物のだれにも共感できず残念な気分に。なんだか嫌な気分だけが残った一冊でした。2018/01/30
ゆかーん
82
これは…ソシオパスの話ではないですか⁉︎社会性のある開業医が、次々に20代の女性たちをレイプする悲劇的な犯罪!常にブランド物を身に纏う金持ちで、自信家でありながらも、妻の浮気にイライラしている男、川辺。決して妻にそのイライラを知られたくない彼は、女性たちをイライラの捌け口とし利用しているのです…。自分が重犯罪と訴えられると、激昂し罵声を浴びせる姿はまさに『反社会性パーソナリティ障害者』と言えます。サスペンスとして読むのが本筋ですが、サイコホラーとして読んで見ると、また違った見方ができて興味深かったです…。2017/06/10