内容説明
カナダでの休暇からもどる途中、山火事に遭遇したクイーン父子。身動きが取れなくなったふたりが見付けたのは、薄気味悪い雰囲気が漂う屋敷だった。初めは使用人に追い払われたものの、主人であるゼイヴィア博士の好意で、泊まらせてもらえることに。しかし翌朝、書斎で博士の射殺体が発見される。右手の指には半分にちぎれたトランプが挟まっていた。エラリーがダイイング・メッセージに挑む“国名”シリーズ第7弾!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
105
再読。犯人は全く覚えていなかった。クイーンでは珍しいクローズドサークル物だが、個人的にはニューヨークの都会で活躍するエラリーが好き。スパイダーマンがビル一つないだだっ広い草原で戦っているような違和感。ダイイングメッセージ物は他の謎との合わせ技でなければ、あまり興味が持続しない性分なので、国名シリーズの中では評価が低い作品ですが、犯人追求のロジックは楽しめる。解説での作品の魅力の説明は相変わらず愛に満ちています。何より新訳は文体が好き。アメリカ銃以降の方がやっぱり読みやすさが増していて楽しめる気がします。2016/06/08
やきいも
91
奇想天外なトリックはでてこないけど、直球勝負のミステリーが読みたい方にはこの国名シリーズはおすすめです。この作品は...犯人を推理して事件解決→その推理は誤りで、新たな事件発生→新たに犯人を推理→その犯人は...という展開。なので「現場に残された証拠を元に論理的に思考して犯人を導きだす」推理の醍醐味を一冊の中でじっくり何度も味わえます。事件も結構意外な終わり方をします!作中に登場する「シャム双子」のイメージは国内の推理作家に影響を与えてます。英米の名作文学を彷彿とさせるこの作者独特の華麗な文章も好きです!2015/10/13
神太郎
59
しっかりとは読んだことがない、エラリー・クイーン。本作は異色であると同時に山火事が迫るなかで殺人犯を推理しなければならないという自身の命もかかる事件なのである。推理を外したり、山火事が迫るなかで焦りもあるのかどこか精細を欠いてる印象が強いし、ダイイング・メッセージが話を二転三転させるというヒントがむしろ推理をややこしくさせてくるという難解さ。これをエラリーがどう論理で解決していくのかが見物で、結末はスカッとしたが、振り回され過ぎたせいか話がまどろっこしいなぁと感じる部分も。あくまで個人的な感覚ですけど。2021/05/21
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
55
国名シリーズでは珍しい、ダイイングメッセージ・クロサーものです。さらに、今回は事件に「乗り出していく」のではなく休暇中のクイーン親子が事件に「巻き込まれて」いきます。カナダからの休暇帰り、車中で言い争う二人を突如山火事が襲います。山頂まで逃げた二人はそこの屋敷に世話になることになりますが、翌朝殺人事件が、握りしめられたスペードの6。異端作だと言われる所以として、読者への挑戦がないことが挙げられますが、これは推理のタイミングが分かってしまうと大分つまらなくなりそうな。謎解きというより話そのものがgood2015/12/19
ピッポ
54
【再読】「ギリシャ棺」以来、確証なき推理は披露しないと決めたエラリーですが、本書では披露する推理は二転三転と迷走してしまいます。積み重ねられる推理は論理性に欠け、真犯人が明かされる場面も少々雑。論理的推理という意味では物足りなさを感じますが、ストーリーはとても面白いんです。山火事が迫るスリリングな展開において、自らの死に向き合いながらも推理せずにはいられないエラリーの性が印象的でした。「読者への挑戦」がないことも含めて、まさに国名シリーズ中の異色作です。2017/05/29