出版社内容情報
ヨーロッパの辺境、荒れ果てた城に住むドラキュラ伯爵。彼は昼に眠り、夜は目覚める吸血鬼であった――。人の生き血を求め闇を徘徊するドラキュラ伯爵。不死者と人間の闘いが、いま始まろうとしている……。
内容説明
ヨーロッパの辺境、トランシルヴァニアの山中。暗雲をいただきそびえる荒れ果てた城があった。主の名は、ドラキュラ伯爵。彼は闇に紛れ血を求める吸血鬼だった―。辺境での雌伏の時を経て、血に飢えた伯爵は大都市ロンドンへの上陸をもくろむ。ドラキュラに狙われた婦人を救うべく立ちあがったのは、不死者の権威、ヴァン・ヘルシング教授。不死者と人間の闘いが、始まろうとしている…。恐怖小説の古典、待望の新訳登場。
著者等紹介
ストーカー,ブラム[ストーカー,ブラム] [Stoker,Abraham“Bram”]
1847年、ダブリン生まれ。ダブリン大学卒業後演劇記者として劇評を書く。これが縁となり、名優ヘンリー・アーヴィングと知り合い、アーヴィングと共にライシーアム劇場の経営を始める。1897年に『ドラキュラ』を出版、イギリス読書界に一大センセーションを巻き起こした。1912年没
田内志文[タウチシモン]
1974年生まれ。埼玉県出身。翻訳家、文筆家、スヌーカー選手(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
322
読む前は、吸血鬼ドラキュラが跳梁跋扈する奇譚小説だとばかり思っていたが、実は厳密な構造を持った本格小説だった。これほど、読後に先入観が大きく変化する作品も珍しい。全編は、主要な登場人物たちの日記や書簡で構成されており、そうした彼らの体験談を通してドラキュラ伯爵の姿が浮かび上がってくるという小説作法をとっている。当時流行した形式らしいが、それにしても実に巧みにその方法を駆使している。陰鬱なロンドンと、さらに凄惨なまでの様相を見せるトランシルヴァニアの情景描写も効果を上げている。まさに世紀末文学である。2015/10/16
まふ
126
吸血鬼物語の代名詞的名作怪奇物語。クリストファー・リー主演の映画(1958年)を少年時代に見てその凄さを知ったが、原作を読んだのは初めて。物語の構成、ドラキュラ伯爵を始め、主人公ミーナ、ジョナサン、ヴァン・ヘルシング博士などの的確な描写等、見事なつくりであり、一気に読みこみ、映画では得られぬホラー感覚をふんだんにに味わった。被害者に血液型の知識がないまま輸血を繰り返したり19世紀末の匂いがぷんぷんと漂うが、そのストーリーは今日でも十分に通用する。「傑作」と言えよう。G1000。2024/01/03
優希
73
元祖ドラキュラ本ですね。黒マントの姿を想像しがちですが、ここで描かれているのはそんな姿とはかけ離れたものでした。日記や書簡という文体で描かれているのには恐怖などの様々な感情を呼び起こされ、物語に惹き込まれていきます。書き手側の感覚は感じられるのに、肝心のドラキュラ伯爵は殆ど登場しないのが意外でした。殆どが主観なので、展開の仕方は面白かったです。ホラーのようなエンタメ性もありますが、ゴシック小説としても楽しめました。怪奇小説の古典として読み継がれてきただけある傑作です。2015/07/05
里愛乍
58
あまりにも有名な、吸血鬼ドラキュラ伯爵。原作小説を読むのは初めてですが、有名すぎてその特徴や弱点はほぼ知っていたままでした。書簡形式で描かれているため、その書き手の心理描写が生々しく、得体のしれない怪物として不気味さを一層増しで感じます。ただ、吸血鬼とはどういうものか概ね知っている自分としては、教授のやたら勿体付けた態度がもどかしかったりはしましたけども。ほとんど姿を見せていない伯爵の存在感も見事です。2016/05/14
NAO
53
元祖ドラキュラ本。主要な登場人物たちの日記・書簡によって進む話は、全体像が見えにくく、語り手の言葉からドラキュラ伯爵の姿がほのかに浮かび上がってくるだけであるため、読み手の恐怖感をあおるのに効果的だ。特に、ドラキュラ伯爵がイギリスに渡ってからの不気味さと臨場感がたまらない。陰気な霧に沈むヴィクトリア朝のロンドンに東欧のドラキュラを組み合わせた作者の発想に脱帽。2015/10/31