出版社内容情報
残酷、非情で甘美……名画の“怖さ”をいかに味わうか、そんな新しい鑑賞法を案内する大ヒットシリーズの第1弾、待望の文庫化。ラ・トゥール『いかさま師』、ドガ『踊り子』など20点の隠れた魅力を堪能!
内容説明
「特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である」。絵の背景にある歴史を理解してこそ浮き彫りになる暗部。絵画の新しい楽しみ方を提案して大ヒットした「怖い絵」シリーズの原点が、満を持しての文庫化。ドガの『エトワール』、ラ・トゥールの『いかさま師』など全22作の魅力。
目次
ラ・トゥール『いかさま師』
ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』
ティントレット『受胎告知』
ダヴィッド『マリー・アントワネット最後の肖像』
ブロンツィーノ『愛の寓意』
ブリューゲル『絞首台の上のかささぎ』
クノップフ『見捨てられた街』
ボッティチェリ『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』
ホガース『グラハム家の子どもたち』
ゴヤ『我が子を喰らうサトゥルヌス』〔ほか〕
著者等紹介
中野京子[ナカノキョウコ]
作家・ドイツ文学者。早稲田大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
258
知識はないけど絵画は好きみたいです私。前から読みたかったこの作品。ブクオフで見つけ即買い。知的好奇心を満たしてくれる良い本です。それほど怖くはないけどね。でもなぜか既視感が。いくつかのエピソードには読んだ記憶が?ルドンのキュクロプスやゴヤのあの名作など。でもまあ読書で疲れた頭を休めるにはピッタリですこれ。そう儚い羊たちの祝宴のメデュース号の筏も入ってますよ。また続編も読もうと思います。絵画に興味あればぜひ!2016/07/07
ナイスネイチャ
214
図書館本。「グラハム家の子どもたち」「メデュース号の筏」「いかさま師」はテレビで紹介されてました。見た目で怖いのと解説読んで怖いのと半分半分。「マリーアントワネット最後の肖像」は悲しくもなりました。2015/09/27
bunmei
199
中野京子氏の『怖い絵』シリーズ、原点の一冊。西洋絵画においては、その時代の背景によって描かれる対象や筆致も違います。今まで何気なく観ている絵画の中にも、様々な人々の強欲、嫉妬、恨み、殺意…が描かれている作品がある事を改めて知りました。本書は西洋文化史の専門家の中野氏だから描ける、それぞれの絵画に纏わる怖さを紹介しています。ゴヤの『我が子を喰らう…』やジェンティレキスの『首を切る…』は観た瞬間にその残虐さに目を背けたくなる程です。また、ドガの『踊り子』の裏話も、興味深いブラック的な怖さがありました。2017/09/13
読特
183
●取っ手のない玄関扉。人を拒む建物。かつてそこで起きた悲劇。内部に死を抱えたまま海に沈んでいく。●38歳のかつての王妃。刑が確定し一夜にして白髪になる。動物死体運搬用の荷車で後ろ手を縛られ大きく市中を引き回される●部屋の中央でうずくまる男がふたり。身を崩れかけている若者。抱き寄せる老人が左手で噴き出る血を止めようとする。傍らに長杖が横たわっている。…恐さの源、それは死。肉体の死、精神の死である「狂気」。抗いたいが、垣間見たい。皮肉にも死の恐怖は楽しみにもなる。見て感じ、知って味わい、生きてる実感を得る。2025/05/03
ケイ
161
ゴヤのサトュルヌスの見るからに怖い絵は、逆に目を惹き付ける。中野さんの言うように、サトュルヌスの絶望や恐怖が現れているからだろう。中野さんが怖い絵に興味を持つきっかけとなったマリー・アントワネットの、おそらく悪意とともに描かれた素描画は、絵が美しくないのであまり興味はもてない。最も惹かれるのは、何と言ってもイワン雷帝の絵。絵自体が優れた作品は他にも収められているが、絵画の扱う主題が絵に乗りうつっているような気がする。2017/08/12