出版社内容情報
三浦 綾子[ミウラ アヤコ]
著・文・その他
内容説明
心晴れぬまま大学生となった陽子は、ある日キャンパスで実母・恵子の次男・達哉と出会う。達哉は異父姉と知らぬまま、以後、陽子に直情的に近づいてくる。それをきっかけに、陽子を中心とした複雑な人間関係が白日のもとにさらされ、それぞれの罪と秘密が明らかになっていく。そして陽子が恵子と顔を合わせる日がやってくる―。人間の愛と罪と赦しをテーマに繰り広げられた壮大なストーリー、いよいよ感動の結末。
著者等紹介
三浦綾子[ミウラアヤコ]
1922年、北海道旭川市生まれ。旭川市立高女卒。59年、三浦光世と結婚。64年、朝日新聞社の懸賞小説に『氷点』が入選、国民的ベストセラーとなる。99年、77歳で逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
117
「罪は、たとえ人間の命をもってしても、根本的につぐない得ないもの。確かに罪とは、ゆるされる以外にどうしようもないものかもしれない。」 罪を犯したことがない人間なんてひとりもいない。生を受け産まれくることこそ罪なのかも知れない。だからこそ大切に生きなければならない。2017/01/29
ナマアタタカイカタタタキキ
112
自ら復讐すな。復讐するは我にあり、我これを報いん。真に裁き得る者だけが、真に赦し得る──『赦し』のためにここまでページが割かれてきたが、テーマだけが一人歩きすることはなく、小説という形式の中へと入念に練り込まれていて見事だった。特に最後の流氷のシーンは、思索的な言葉でそれについて語るよりもずっと鮮明に、読者の心に焼き付くのではないだろうか。それでも、愛とは感情ではなく意志だ、という啓造の言葉の真価には、自分自身の足で辿り着かねば触れられないことは確かだ。その旅路はこの物語よりも遥かに長い道程となるだろう。2021/05/09
のり
109
陽子の潔癖さが、次第に己を苦しめる。産みの親と育ての親。二つの家庭を思い遣り、誰にも本音を語れず…ストレス溜まるだろうなぁ~。異性への想いも揺れ動く。生きるという事は、生易しくはないが、陽子のおかれた立場は苦難過ぎる。結局最後まで夏枝には呆れた。人には冷酷で、余計な事まで口にする。しかも色好みで嫉妬深い。旦那の忍耐力に拍手。(^o^)ラストはようやく光が射し、力んで読んでいたため、未来が開けそうでホッとした。結婚相手は読者の想像任せなのかな?勝手に自己判断しましたけど…2017/04/12
優希
100
大学に進学した陽子が異父弟・達哉と出会うことで複雑な人間関係が白昼にさらされていくようでした。その様子はまさに昼ドラを連想させます。それでいながら色濃い宗教色。キリスト教という背景が物語を人間の愛と赦しというテーマへと結びつけているのだと思います。陽子の目の当たりにした燃える流水の奇跡がイエス・キリストの流された血の象徴であり、それを感じ取れたからこそ救いを得ることができたのでしょう。浮き彫りになった「原罪」を赦せるかをテーマに、読み切らせてくれました。愛と罪と赦しの物語に胸を打たれるばかりです。2015/08/05
Nobu A
96
三浦綾子著書4冊目。「氷点」「続氷点」と続き読了後の何とも言えない余韻を残した充足感。良書の証左。自儘な良枝や狡獪な村井等、個性豊かな登場人物も重厚な物語を構成する上で必要不可欠だったかなと感じる。とりわけ舞台となる大自然豊かな北海道は。キリスト教の「原罪」と「寛恕」を現代社会に見事に組み込み、物語を展開する翹楚な筆致。堕胎だけでなく幼児虐待等、暗いニュースを頻繁に目にする現代、人とはどうあるべきかを考えさせられた。敬虔な宗教信者ではないが、作家の旧・新訳聖書入門書も読みたくなった。分かり易く書いてそう。2025/02/16