内容説明
子供を捨てる親、親と関わりをもちたくない子供。セルフネグレクトの末の孤独死。放置される遺骨…。孤立・孤独者1000万人の時代。リストラや病気など、ふとしたことでだれもが孤立へと追いやられる可能性がある。この問題を追い続けてきた第一人者が、ふつうの人が突然陥る「家族遺棄社会」の現実をリアルに取材。そんな日本社会に懸命に向き合う人々の実態にも迫る衝撃のノンフィクション!
目次
第1章 親を捨てたい人々(父を遺棄した僕が母を捨てるまで;家族を捨てた父の孤独な死 ほか)
第2章 捨てられた家族の行方(ゴミ屋敷の中で餓死寸前の42歳女性;コンビニの冷凍ペットボトルが生命線 ほか)
第3章 孤独死の現場から(尿入りペットボトルが物語る悲しき警備員の死;犬に体を食べられた独身派遣OLの最期 ほか)
第4章 家族遺棄社会はどこからきたのか(終活オヤジ記者が見た葬送の大変容;OECDで社会的孤立がトップの日本 ほか)
第5章 家族遺棄社会と戦う人々(事故物件専門「お祓い」の神主が向き合う無縁社会;お祓いの9割は孤独死物件 ほか)
著者等紹介
菅野久美子[カンノクミコ]
1982年、宮崎県生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。出版社の編集者を経てフリーライターに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
101
年間約3万人といわれる孤独死。そのなかにあるセルフネグレクトの末の孤独死、ゴミ屋敷の中での死。遺体発見が遅れれば特殊清掃が入り、子どもや親族が引き取りを拒否する場合は家族代行業社が入り最後の後始末を引き受ける。火葬場でお骨を持ち帰らない「0葬」というのまである。家族であっても、厄介で面倒なことには関わりたくないということか。孤独死した人を掘り下げていくと、家族が家族に遺棄された社会、社会から遺棄された家族の「家族遺棄社会」が見えてくる。死ぬのはみんな同じだけど、考えておくべき点は多いな。2021/09/27
つちのこ
37
今年度の65歳以上の孤独死者数の推計が過去最高の6万8千人となるというデータが昨日発表された。家族や社会から孤立し、誰にも看取られないで死を迎えることはもはや珍しくもない。本書で、著者は遺棄社会という辛辣な表現を使い、その実態を生々しくルポしている。家族関係の希薄さを象徴してか、葬儀を行わない直葬があたり前になり、納骨もされない。遺骨の引き取りを拒否するケースも増えてきている。業者を使っての近親者なしでの火葬がふつうの世の中になる近未来を自分の死後に当てはめてみると、遺棄社会がより身近な言葉に思えてきた。2024/05/14
おかむら
31
孤独死をとりまく現状をルポ。家で一人で亡くなるっていう事態は私も将来そういうこともあるかもとは思うが、問題はその後発見されるまでの日数だな…。LINEの既読が丸一日つかなかったら心配してほしいわ。特殊清掃の現場はとにかく「臭い」の描写が凄まじくて滅入る。あと、孤独死一歩手前のセルフネグレクトでゴミ屋敷に住む女性の話も凄まじかった。NHKのひきこもりドキュメンタリーでも思ったけど、部屋のゴミ屋敷化はメンタルが発するアラームだな。2021/01/09
原玉幸子
22
目次だけで内容が全て分かってしまう、例えば「人間としての形があればお父さんだが、亡くなればただのモノになる」との実態を、淡々と又延々と綴ったルポです。日本の檀家制度は崩壊していると思っていても、無縁仏となる身寄りの無い人間に関わる切ないレポートには、私が加害者になった様な身につまされる思いを感じました。「あぁそうだな。セルフネグレクトと紙一重なのか」と、その人の行く末を想像し納得してしまいました。自殺も孤独死も多い男性にとっての「家族とは」「社会とは」を、厭になるほど考えさせられます。(◎2024年・秋)2024/08/17
まゆまゆ
14
孤独と分断が今後ますます進んでいくと思われる日本社会は、家族すらお荷物として次々と捨てられていく。社会全体が巨大な墓場であるかのように孤独死も増加を続けている。そんな中でも孤独死に向き合う家族代行業者や特殊清掃員、宮司などを紹介していく内容。確かに縁遠い親族の遺骨なんて処理を依頼されてもやりたくないのが本音で、金で解決できるなら……と思う人がもう多数派なのかな、と思ってしまう。2020/11/04