出版社内容情報
欲望渦巻く街、新宿二丁目。変わり続けるこの街とともに人生を歩んできた6人の物語。今、この街と人が語りえるものとは何か。気鋭のノンフィクション作家による渾身作。
Episode 01長谷川博史
（特定非営利活動法人「日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス」理事）
「私が死んだら、この街に骨を撒いて」
Episode 02 村上ひろし
（元「バディ」編集長）
「出会い」が希薄化しつつある街に
Episode 03 一ノ瀬文香
（タレント・「香まり」オーナー）
この街とともに生きていく
Episode 04 コンチママ
（「白い部屋」オーナー）
今後は普通の街になる
Episode 05 りっちゃん
（「和食クイン」オーナー）
心の憂さの捨てどころ
Episode 06 山縣真矢
（特定非営利活動法人「東京レインボープライド」顧問兼理事）
「プライド」のある街
Episode 07
変わりゆく街、変わらぬ街
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
58
30年近く前、週末はこの街へよく足を運んだものです。一歩、足を踏み入れるとここだけ別の世界であるかのように思ったものです。向こう側とこちら側。怖いところへ来てしまったと感じたのもつかの間、いつの間にかこの華やかで淫靡な世界にどっぷりはまってしまっている。本当は知りたかったことがあって、ここに書かれているかなと期待をしていたんだけど、それはありませんでした。「白い部屋」のママあたりを深掘りするだけでもっと面白い二丁目が描けると思うんだけど、なかなかこの世界けつの穴が小さい街だけに厄介なのかもしれません。2020/05/01
キク
49
新宿2丁目って、日本で1番有名な地名丁番なんじゃないだろうか？かつては同好の人と出会う為に、それこそ日本中の孤独なゲイが2丁目に憧れていた。高校が北海道の男子校だったけど「東京の大学に受かって2丁目に行く」という夢を語っていた同級生もいた。でも、本書に出てくる古くからの住民達は「観光化とネットの発展によって、ゲイは逆に2丁目から逃げていった」と寂しがっていた。顔をさらさずにゲイ専用マッチングアプリで出会いを求めるらしい。コロナ禍とネットの発展って、世界の在り方と人の関わり方を、確実に変えていくな。2021/08/28
わん子
20
ゲイやオカマ（戸籍上男性生まれ）が自分のセクシュアリティやアイデンティティに比較的真っ直ぐに生きてきたのに対し、レズビアン（戸籍上女性....と言っても登場するのは1人だけなのだが）は非常に迷ってきて、そして今も迷っているのが印象的。一ノ瀬文香さんの述懐は自分ともかなり重なる部分があり、共感的に読んだ。マイノリティでありながら正直に力強く生きる姿勢に、そうして生きることで何度も死を考えなくはならなかった、そして今もそういう可能性がない訳ではない自分の人生も救われた気がした。2021/01/26
チョビ
7
オープンな遊廓や同性愛が明治以降隠微なものになっていったが、「政治」という俗物に寄り添うことで法で守られ、社会的にオープンになることにプラスしてスマホ文化により消えていくだろう古き良き新宿二丁目を語る人々、これからを見据える人々を長谷川氏がチャーミングに描く。正直オープンにしていくことは諸刃の剣だと考えさせられる。しかし、読んでて無邪気に人権人権と騒ぐ素敵な人たちって自分のことしか考えていないようにも思えて、今の２丁目の状況を知っていない気がするのだ。大きなお世話な人間にならないようにと戒めになる。2020/07/14
anken99
5
一気読み。元ヤクルト、伊藤智仁に関する作品など、スポーツノンフィクションライターだとばかり思っていた著者。こんなテーマでの作品を発表していたとは知らず、思わず手にした次第。「新宿2丁目」、すなわちゲイ、おかま、ホモといったカテゴリーにくくられる人たちの町だと認識していたが、そんな「二丁目」のいまを切り取っていく。6人のキーマンへのインタビューという構成だが、いずれもなみなみならぬ人生を送ってきた人たちばかりであって、単純に興味をそそられる。身近にLGBTの中に入る人がいることもあって、非常に勉強になった。2021/04/16
