- ホーム
- > 和書
- > 児童
- > 創作絵本
- > 民話・神話・古典絵本
出版社内容情報
収められた二作品はいずれも、生命の根源を凝視し、哀しいまでに澄明な永遠の美を感じさせ、読者を自然にその世界へ誘う。 小学校中学年から一般むき
内容説明
この本に納めた、『おきなぐさ』と『いちょうの実』は、賢治が企図していたらしい「花鳥童話集」に入るべき二篇です。『おきなぐさ』では、飛散した種子は天にのぼって変光星になったと思うと書かれ、『いちょうの実』では、落下した果実は死の不吉なかげを濃くただよわせながらも幼い生命の旅立ちとして書かれています。いずれも、哀しいまでに澄明な永遠の美を、感じさせます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこたん
50
“僕はね、水筒の外に薄荷水を用意したよ。少しやろうか。旅へ出て、あんまり心持ちの悪い時は一寸飲むといいって、おっかさんが言ったぜ。” 薄荷水は飲まれたのだろうか。いちょうの実たちのそれぞれの旅支度に、ふふふと笑みがこぼれたり、キュッと胸が痛くなったり。「おきなぐさ」も「いちょうの実」も、さよならの物語だった。どれだけ愛しまれても居心地がよくても、ずっと同じままではいられない。機は熟し、風に促されて、その時を迎える。おきなぐさの別名は、うずのしゅげ。賢治はこの花もうずのしゅげという名も好きだったのだろうな。2019/12/16
ヒラP@ehon.gohon
32
大自然の中でひっそりと咲くおきなぐさの、静かで控えめな存在感が、美しく語られた絵本です。 たかしたかこさんの、水彩画スケッチのような、情感を面に出さない雰囲気の絵に癒やされました。 「おきなぐさ」の健気さのおまけのように描かれた「いちょうの実」も素晴らしいと思いました。 独り立ちすると銀杏の実の個性を具象化した絵本を見てきただけに、素朴感がかえって心地よく感じられました。2022/12/08
らん
26
擬人化した及川さんのキュートな絵も良かったけれど、たかしさん描くほんわりしたいちょうの実も可愛らしい。おきなぐさの優しく淡い色彩の絵に、昔見た景色、匂いを思い出し郷愁に駆られる。。空に浮かぶ雲を眺めたくなるなぁ。。心がぎゅっとなる哀しみも切なさも、雲や星空を眺めて穏やかになる気持ちと同じように美しいんだなぁ、とふたつのさよならの物語を読みながら思う。ここにある永遠の美のように、心にある消える事のない原風景を大切に思い出そう。繰り返されるさよならの命の輝きを、こんなに優しい眼差しで見つめていたい。2023/11/26
gtn
26
今世を生き切り満足げなおきなぐさ。次の世への旅立ちに不安を隠さないいちょうの実。いずれも、どこかいい処に生まれ出づるに違いない。生涯を見届けた太陽と星も、そう保証しているように見える。2021/05/19
七月せら
26
これまで見たことも聞いたこともなかったおきなぐさですが、すっかり大好きな花になりました。今年の秋の末、木枯らしが吹くころには黄金色のいちょうの木の下に立って、密かなざわめきに耳を澄ましてみようと思います。自然を愛する心と旅立ちの決意に溢れた、本当に美しい2編でした。遠くけぶる山々、広がる野畑、空の頂までを見はるかす、たかしたかこさんの絵が心に染み渡ります。2019/02/10