出版社内容情報
貴重な硯を割った青年の罪をかぶり、追放された心優しき若君は嘆きのあまり病気になってしまい・・・。今昔物語の話を絵本にしました。 小学校高学年から
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
shoko
15
『シャエの王女』がよかったのでこちらも読んでみた。同じ今昔物語集をベースにした、槇佐知子x赤羽末吉タッグの絵本。おそらく絵と和紙の組み合わせで挿入画が描かれており、物語からも静謐な美しさを感じる作品。自分の犯した罪との向き合い方を、罪を犯した人間と親の立場からそれぞれ考察させる内容になっていて、ストーリーも良い。/このタッグの作品もっと読みたいけど、ニ作品しか世に出ていなさそう…残念。2025/07/03
花林糖
15
(図書館本)赤羽末吉さんの絵が美しく切なくとても素敵です。赤羽さんの火の玉の絵が印象的。切なく悲しい絵本。元話は巻十九の九話「小さき稚児を悼みて硯を割りし侍出家せること」。2017/02/14
ochatomo
13
「私の絵本ろん」より 今昔物語集の一話を作品化 『いろいろな素材にぶつかってきた素地が、ここでフッとでたのではなかろうか』 高校生向きに古典文学の入口として企画されたが年配の男女の反響が大きかったという美しく切ない王朝絵物語 1979刊2021/03/30
ケロリーヌ@ベルばら同盟
13
素晴らしいレビューに惹かれて。村上帝の御代、姫君の入内を控え、望月の欠けたる所無き権勢に酔う左大臣は、輿入れ支度の由緒ある硯が損なわれた事に激怒し、硯を割った側仕えの青年を庇う若君を放逐してしまいます。幸福の絶頂に些かの瑕疵も恕す事が出来ず、掌中の珠を自ら潰す如き所業は若君の痛ましい死となって、大臣の身に還ります。無垢な声明は、墨染めの衣に身を包んだ悔恨に骨と皮ばかりに痩せた青年を、綾衣の中に虚しく老いてゆく大臣を、何処へと導くのでしょうか。逝く春に珠玉の作品を読む機会を下さった読み友様に心からの感謝を。2018/04/30
月音
8
時は平安時代。左大臣家に仕える青年は、家宝の硯を不注意から割ってしまう。その場に居合わせた十三歳の若君。泣き惑う青年をなだめ、父には自分が割ったことにするように言い含めたのだが…。原話は『今昔物語集 巻十九の九話』で、画は赤羽末吉。流麗な筆遣いは絵巻物を思わせ、人物の胸中を情景に託して読者の想像にゆだねている。とりわけ、表紙にもなった若君の姿の清らかさ、彼の心を映す荒れ野の寂しさ、怒り狂う父親の画が素晴らしい。この父親のシーンは、原話にはないオリジナルのクライマックスと言える名場面。⇒続2025/08/16




