出版社内容情報
漁師の父と朝鮮人の母との間に生まれた多毛留は、成長して父母の関係を知る。 小学校高学年から一般むき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
177
俳優であり絵師であった米倉斉加年さん。海の向こうにある国との平和を願い、この絵本を創作した。昔々、阿羅志という漁師がおった。いつも独りで海へ出ては、はるか遠くを見つめていた。十八の夏。ひどい嵐の晩、白い服を着た色白が雨でとけてしまうほどの乙女がやってきた。多毛留が生まれた。凄まじい絵。鮮やかな色。冷めきった目。生命の熱を感じない冷淡な表情。艷やかな髪もかき乱れ、尖った指先に炎も消えた。ものいわずとも目を見れば何でもわかった。赤い涙に染まり悲しみのうちに沖へ出た。首を振り海へ飛び込んだ。不思議な物語である。2023/02/06
Vakira
43
米倉斉加年さんの描く絵はいいな~。夢野久作の小説の挿し絵では知っていたけど、絵本がありました。エロティックな絵はありませんでしたが、男も女も独特なスレンダーなシルエットでセンスが素晴らしいです。語りは博多弁で不思議な世界に引き込まれます。テーマもしっかりあり、考えさせられました。米倉斉加年は昨年の8月に亡くなってしまった。もうこの絵が見れないと思うと残念です。2015/03/15
ヒロ@いつも心に太陽を!
31
【下鴨納涼古本まつりにて】とにかく、絵に引き込まれてしまった一冊。表紙からしてハッとさせられるものがあったからこそ手にしたのだが、ページをめくるとそこにはドラマチックかつとても印象的な緻密で美しい絵と考えさせられる物語が書かれていてびっくりした。私には多毛留の行動が理解しきれなくて、何度か読み直して自分なりの解釈を見つける必要を感じた。それにしてもこの絵本を初めて読んだときの衝撃はけっこうなもの。読メの皆様にもぜひオススメしたい!!2012/08/13
たらちゃん
28
岐阜に大きな木という絵本専門店がある。子どもだった私がそこに辿り着いて、何時間もかかって少ないお小遣いから買った二冊の内の一冊がこの本。よくぞ選んだと今でも思う。無駄のない線、色。美しい文字も言葉も。宝物です。
凛
20
全てにおいて簡潔で、幻想的で悲しい絵本。絵が美し過ぎる。毒を持つ美しさ。2014/06/07