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白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになった狐、白狐魔丸の人間探求の物語。江戸に幕府がひらかれ三十余年。九州島原で、飢饉や重税、そして信仰の弾圧に苦しむ農民が一斉蜂起した。一揆の大将は不思議な術と眼力をもつ若者。名を天草四郎時貞という。小学校高学年から。
著者等紹介
斉藤洋[サイトウヒロシ]
1952年、東京都に生まれる。中央大学大学院文学研究科修了。現在、亜細亜大学教授。『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社新人賞を、その続編の『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞を受賞。路傍の石幼少年文学賞受賞
高畠純[タカバタケジュン]
1948年、愛知県に生まれる。愛知教育大学卒業。絵本『だれのじてんしゃ』でボローニア国際児童図書展グラフィック賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さつき
75
タイトルと表紙絵から今回は悲惨な話しになるのだろうと思い、なかなか手が出ませんでした。案の定、戦嫌いな筈なのに白狐魔丸ははるばる島原まで行き、乱の様子を見守ることになります。指導者達の思惑は別にして、大多数の農民にとって乱は宗教戦争ではなくて圧政に耐えかねた一揆。困窮する島原の民の様子はよく描かれていたけれど、時貞の描き方はちょっと残念。彼がなぜ自分は神の子であると確信したのか、どうやって力を磨いたのか等が全く空白なので、白狐魔丸と同じようにもやもやとした気分で読み終わりました。雅姫は相変わらず最強です。2020/09/23
りらこ
27
いわゆる島原の乱が舞台。そうだった板倉重昌は討死したんだった。雅姫は自分の力が巨大だからなのか、優しく戦い下手のことを好きになるね。復讐の矛先は天草四郎時貞。術が使え神の子を僭称していると描かれている。最後に呟く言葉など、よく練られている。表紙をよく見たら書いてあるじゃないの。白狐魔丸は雅姫の物差しに決して左右されずに自分で考えて双方の行動を分析しようとするあたりが好ましい。先にこの先の2巻を読んでしまった(図書館の予約の関係)けれどこちらも良かった。明治時代以降の白狐魔丸も読みたい。2022/09/18
豆電球
16
天草四郎は本家カトリックからも黙殺されている異端児というイメージを持っていたのだけれど、児童書でここまでキッパリ異端児として描かれた事に驚くし、著者の本気を感じました。かと言ってキリシタンを否定するのではなく、迫害の事実もちゃんと述べられている。客観性を持たせる事や史実から真実を読み取ろうとする目線を持たせるには、白狐魔丸という狐を主人公に据えるというのは非常に有効だと改めて思いました。江戸時代以降は不得意なので前作までに感じた深みや隠し味を今作では感じられなかったのですが、それでもこのシリーズは面白い。2022/02/13
mike
15
歴史の教科書でしか知らなかった島原の乱、キリスト教弾圧、そして、天草四郎。これまで天草四郎をカリスマヒーローと思い込み、乱を美化していた気がする。本書を読んでいて、何事も一方向からの情報で全て知った気でいるのは危険であると再認識。今回も白狐魔丸が、何とか犠牲者を出さないようにと奔走する。その思いが強くなるほど、新たな術を身に付けて成長していく。2020/06/15
みーまりぽん
14
本能寺で織田信長の最期に立ち会ってから55年が過ぎた寛永十四年、白駒山に暮らす白狐魔丸のもとへ弟子入り希望の南蛮堂煙之丞という男がやってきた。 ちょうど山へ帰ってきた仙人に言われるまま弟子とした煙之丞を追って、九州へ。煙之丞はキリシタン一揆鎮定のための幕府軍総大将・板倉重昌につかえるしのびであり、そこには雅姫もまたつかえていたのだった。。 海を歩いてくる天草四郎との出逢いなどなど、途中でやめられないぐらい愉しく、かつ、考えさせられつつ原城陥落まで進んでいきます。 まぁしかし、なんつっても雅姫、魅力的だ。。2015/01/15