出版社内容情報
呼人は、なにかを寄せてしまう
動物や、虫や、植物、自然現象
だから、ひとつの場所にとどまらず、
旅をする
人とちがうこと、それでも隣りあって生きること
痛みと希望の連作短編集。
「呼人」とは、なにかを引き寄せる特殊体質。原因は不明でごく少数だが一定の割合で発現する。政府機関によって認定され、生活に制限がある。5人の呼人と、呼人に関わる人たちの姿から、社会の中で少数であること、そうした状況で生きるというのはどういうことか、を描く。
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「……真帆ってすごいね」
「なにが?」
「あたしの目の前で、自分は恵まれてるって、はっきりいうなんて」
真帆は首をかしげた。
「だってそうじゃない? くいなは自分で選んでないのに旅をしなくちゃいけなくて、わたしは旅をするかしないか、好きに選べる。それってわたしが恵まれてるってことだよね?」
(本文より)
内容説明
呼人は、なにかを寄せてしまう。動物や、虫や、植物、自然現象。だから、ひとつの場所にとどまらず、旅をする。人とちがうこと、それでも隣りあって生きること。痛みと希望の連作短編集。
著者等紹介
長谷川まりる[ハセガワマリル]
長野県生まれ東京都育ち。『お絵かき禁止の国』で講談社児童文学新人賞佳作、『かすみ川の人魚』で日本児童文学者協会新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
107
YA。「呼人(よびと)」はそこにいるだけで特定の「何か」を呼び寄せてしまう性質をもつ人。呼人になってしまう原因は不明で治療方法は無い。生態系や社会生活に多大な影響をもたらすため、呼人は定住不可能で常に移動生活を送る▽雨を呼ぶ。たんぽぽを呼ぶ。鹿を呼ぶ。男を呼ぶ。鳥を呼ぶ。自身の責任でも因果でもない、特性マイノリティの話。自分と違う人間を保護したり差別したり、同情したり拒否したりする▽SF設定で目に見える形の物語にしてあるけれど、まさしく現代の物語でもあるなと感じました。2024.10刊2024/12/13
ナミのママ
87
「スケッチブックと雨女」「たんぽぽは悪」「鹿の解体」「小林さんの一日」「男を寄せる」「渡り鳥」6話の連作短編集。「呼人」とはなにかを引き寄せる特殊体質。1話目の紫雨は小学生だが雨を呼び寄せる雨女。彼女がおわかれ遠足に参加したいと言い出した事でクラスは大騒ぎになる。決まっていたアスレチックランドは変更になってしまう。…生活に制限ある呼人は少数派で、周囲を巻き込んでしまう。普通とは何か、人と違うとはどういうことかを呼人という設定から考えさせられる良書。【第7回ほんま大賞】を受賞した児童書。2025/02/17
chimako
71
「多様性のとても良い本なので」と言う出版社の方の強い推しで。しかし「多様性についての本」だと思えなかった。周りとは違う「呼人」と言う体質を持つ若者たちを描いているがその世界はもっと切実でおおらかで生きる力を感じる。ある者は雨を降らせ、ある者はタンポポを繁らせ、ある者は鹿を群れされ、ある者は男が寄ってきて、ある者は鳥を呼ぶ。本人の意思とは関係なく旅することを余儀なくされる。一ヶ所に留まれば生態系にも影響を及ぼすから。もし本当に呼人がいれば政府が宿泊代位は負担しないとね。表紙も可愛い。2025/02/26
はる
64
花や動物など、特定のものを呼び寄せてしまう「呼人」といわれる子たちの物語。ファンタジックな設定だが、その表現は極めて現実的。「呼人」たちが直面する差別や障害は、現実社会での障害者やトランスジェンダーの人たちのそれと重なる。登場人物の複雑な心境が丁寧に描かれた良質の物語だった。2025/06/02
がらくたどん
54
柔らかくて豪速でもないのに受け止めたらお腹にドンと来る。『杉森くん~』も衝撃だった。まりる砲再び♪若年層に突然「呼人」化が起こる世界。呼人は特定の何かを磁石みたいに呼んじゃう人。雨にタンポポ、鹿に男に鳥!社会の混乱を避けるため登録義務があり未成年でも国の施策で移住を繰り返す。迷惑?かっこいい?保護されててずるい?気持ち悪い?可哀そう?面白そう?今のところ呼人じゃない君もとりあえずいろんな呼人の話を聞いてみてよ。「呼人の○○さん」じゃない「○○さん」も見えるかな?「そこに居る」事から始まる社会を問う。秀作♪2025/02/26