内容説明
べつの世界…ものいうおうむがいて、屋台ではたらくたぬきがいて、木の精の洋服屋がいて、死んだはずのだれかも…そこでは、時間のながれかたまでちがうとか。ふだんはいつもの風景にとけこんでいて気がつかないけれど、なにかのひょうしにとつぜん、パタン!とびらがひらかれるのです。このあとの七つのふしぎな物語を読めば、もしかするととびらの見つけかたが、わかるかもしれません。安房直子第二短編集『白いおうむの森』完全収録。小学上級から。
著者等紹介
安房直子[アワナオコ]
1943年、東京に生まれる。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっこ』(第3回日本児童文学者協会新人賞)、『北風のわすれたハンカチ』(第19回サンケイ児童出版文化賞推薦)、『風と木の歌』(第22回小学館文学賞)、『遠い野ばらの村』(第20回野間児童文芸賞)、『山の童話 風のローラースケート』(第3回新美南吉児童文学賞)、『花豆の煮えるまで―小夜の物語』(赤い鳥文学賞特別賞)等、受賞作多数。1993年、永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
62
不思議で美しくて、哀しい。安房さんの魅力が詰まった短編集。幼い娘を亡くしたおでん屋さんの物語「雪窓」など、「死」をテーマにした比較的怖めの作品が多い。好みは温かなタッチの「雪窓」だけれど、どの話も味わい深くて魅力的。こんな時代だからこそ心に沁みる短編集。2020/04/29
めしいらず
59
大切な人の喪失。澱のように底に沈んだ痛みが幻視したのは、彼岸と此岸の境目の風景。それぞれがそこで束の間見た景色は、怖いくらい綺麗で、そして寂しいものでした。失うことでしか得られない感情があります。それはきっとすごく痛いけれど、自分の人生の見え方が随分と違ったものになると思いました。一編選ぶなら「てまり」。貧富の垣根を超えて出会った2人が、やはり貧富の差ゆえに分かたれます。束の間だったけれど、大切な景色を共有した2人は、互いが本当の友だと知りました。彼女たちの思いをつなぐのは、てまりの中で響く小さな鈴の音。2014/07/04
瑪瑙(サードニックス)
48
短編集。『雪窓』は以前読んだ事がありました。幼くして亡くなった娘を思うおでん屋さんとたぬきとのお話。表題作の『白いおうむの森』は亡くなった姉を思う妹の悲しいお話でした。死後の世界がそんなだったらとても悲しい。『雪窓』以外は美しいお話や寂しいお話、悲しいお話、ちょっぴり恐ろしいお話が多かったです。読み終えるととても寂しい気持ちになりました。2021/01/20
ちえ
45
「その人のことを思い続ける人がいる限り人は生き続ける」というようなことを聞いたことがある。どれほどその言葉がなぐさめになっているか…。それを思わせる安房直子の童話。「雪窓」「白いおうむの森」以外は初読。怖いながらもほっとできる「鶴の家」「野ばらの帽子」、「灰色のスカート」は思わず引き寄せられそうな怖さがある。「野の音」初めの可愛さを感じる話からは想像できない怖さ。「てまり」はたおりの娘との時間を過ごし一つ大人になったお姫様。<遠くの人を思うこと>蜂飼耳の解説もよかった。2021/12/30
はる
41
再読。「雪窓」をはじめ、どの話も不思議で切なくて、少し怖い。日常のとなりの異世界への道。安房さんの童話は子供のころから良く読んだけれど、あらためて読み直してみると、どれも深い味わいがあります。2016/03/29
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